秘湯連続死亡事件 真理とサスケの事件簿④

[ミステリー]

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 八月八日日曜雨の午後、奥山温泉の河原にある特設野外ステージの裏で、Marimuraの新商品CM撮影スタッフ山田勇作の遺体が発見された。休暇で奥山温泉に宿泊する新聞記者飛田佐介と真理の夫婦と、再従伯父の佐伯刑事夫婦は事件に遭遇し、佐介と真理は佐伯刑事に依頼されて事件現場を撮影した。遺体解剖の結果、山田勇作の死因は、高さ六メートの特設野外ステージからの転落死で、他殺か否か不明だった。
 新聞社のデータベースで調べると、撮影スタッフの山田勇作と関口虎雄と福原富代は、今は廃村になった奥山村の出身で、十五年前、百万円を貸してくれた同郷の宗谷慎司を殺害した『借金未返済殺人事件』の加害者だった。『借金未返済殺人事件』後、三人の家族は村八分になり離村していた。
 福原富代の弟は、三人の家族が離村する原因を作ったのは被害者宗谷慎司だと逆恨みし、宗谷慎司の家族全員を殺して自殺する『奥山事件』を起こしていた。『奥山事件』の際、宗谷慎司の妹二人が行方不明になり、『奥山事件』後、奥山村は廃村になっていた。
 八月八日日曜夜十時。関口虎雄が奥山館の地下倉庫で感電死し、福原富代が奥山館の屋上から転落死した。関係者の事情聴取と福原富代の爪に残った遺留物から奥山館の複数の従業員がアリバイ工作した事と、奥山館の元館主・奥山渓二郎とMarimuraの経営者・鞠村まりえが事件に関係していると判断された。
 八月九日月曜。奥山渓二郎と鞠村まりえを取り調べると奥山渓二郎が三人殺害を自供したが、福原富代が山田勇作に当てた誕生日の期日指定メールに、『いつか、ここにもどると思ってた やっぱり、もう、逃れられない ずっと、ここに留まることにしたわ』と自殺を示す言葉があり、全ての事件を画策した奥山渓二郎は一連の自殺事件の目撃者に過ぎない事を自供した。奥山村を廃村にした三人を自分の手で葬ろうと思っていた奥山渓二郎は、悔い改めて命を絶った三人を見捨てられなくなった。
 八月十四日土曜。奥山渓二郎と奥山郷の者達は、旧奥山村の墓地で三人の葬儀を行い納骨し、奥山郷の者達は各自の家の墓参りをした。三人の死は自殺として小さく報じられた。事実を明かせばこの地域は荒れ果て二度ともとに戻らないと佐介は思った。

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