二重写しの日常

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[創作論・評論]

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「なんのことはない、私の錯覚と壊れかかった街との二重写しである。そして私はその中に現実の私自身を見失うのを楽しんだ」 梶井基次郎『檸檬』

ファンレター

未村 明さま

批評などという偉そうな文章を書いて改めて感じられるのは、
優れた批評文というのは、現実を生活する人々が共同し幻想する〝「われわれの」虚構〟を
バージョンアップさせるような装置であるという事です。

かつて丸谷才一は批評家の使命を「文明貢献」と呼んでいました。
丸谷の理想と比べると、私の文章など自己幻想でしかないのですが、
言葉の力で〝「われわれの」虚構〟を解体し「文明貢献」を果たす、
そうした夢想を語りたくなる気分はわかる気がします。

そうであるなら、作家の皆さんは読者ばかりか、キャラクター自身の世界観にまでも、
同じように影響を与えられる立場にあると思えてくるのです。
ですから私などは、そうした「別人格を作る」技量をとても羨ましく思っています。

「簡単に殺されるマイナーキャラ」を言葉の力で救い出す。
いつか私にもそのような文章を書ける日が訪れることを願って止みません。

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