セリフ詳細

ヨウコと老人は、白い広間から奥へと向かう回廊を歩いて行ってしまった。

僕はこの先に言ってしまえば二度と帰れなくなってしまう気がして、その場でためらっていた。人間とか猫とか関係なく死んだ後に行くべき場所だ、と僕の本能が語りかけて来る。

その本能を超えるために意を決して、前足を一歩踏み出そうと頑張っていたとき、今度はまた別の何かがこの部屋で起き始めたことを察知した。

何処かで何かが空気を細かく震わせている。その微細なゆらぎを僕の髭がキャッチしたのだ。

なんだろう?と思いながら、振り返り辺りを見渡した。でもさっきと変わりなく、白で統一された戸棚とテーブルに椅子とピアノがあるだけで、特に異変はなかった。

僕は部屋を横断するように行ったり来たり一往復してみたが特に異常はなかった。しかし依然として僕の髭はまだ何かの微細な振動を感知していた。わけがわからずただ油断を怠らないように気をつけながらその場に立ちすくんでいるうちに、ふと視界の上の天井に何かが見えた。それは得体のしれない光沢のある黒い雫のようなもので白い天井のあるところからゆっくり滲み出るようにこの部屋に侵入している。

作品タイトル:とある廃墟ビルディングにて~天国と地獄編~

エピソード名:第15話

作者名:Tadashi_Kimura

3|ホラー|完結|16話|73,203文字

オカルト, ホラー, 怪談, 黄昏症候群, 心霊スポット, 都市伝説, 村山台駅, 幽霊, 高校生, 超古代文明

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学校を終えて下校中の女子高校生二人組が、最近耳にした、女の幽霊の声が聞こえるという、とある廃墟ビルディングの噂話を口にした。一人がスマホを取り出して、その廃墟ビルを探索して撮影したオカルト系YouTuber怪異シーカーズの配信動画をみている内に、好奇心をくすぐられた彼女たちは、まっすく帰るための駅には向かわず、得体のしれない何か背中を押されたかのように、その駅からそう遠くないところにある噂の廃墟ビルディングへと向った。その場のノリで見に行ったにすぎない廃墟で彼女たちが見たものとは‥‥。

これは一般小説で書いた作品を、チャットノベル化してみたテスト作品だったのですが、楽しくなってもうこっちをメインで書いてます。あとこれは、必ずしも連続性のない『とある廃墟ビルディングにて』のシリーズ姉妹作品です。