第23話、笑顔の理由

文字数 450文字

アリスが自転車で帰って来た。
マンション近くの、溝の前で子供が泣いていたので、自転車から降りて声をかけた。
「どうしたの?」
「シール……」
子供は溝の中に落ちたシールを指さした。いちごやカップケーキのキラキラしたシールが溝に落ちている。アリスと小学生くらいの子供は一緒にシールをとっていた。
シールは小さな箱ごと落ちていて、散らばってしまっていた。なかなか全部は拾えない。
「何やってるんですか!」
子供の親が声をかけてきた。
「シールが落ちたみたいですよ」
「落ちたよぉ……」
「新しいの買ってあげるから、すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、では」
「あのお名前は?」
「ああ、すぐそこのマンションの202号室のものです」
「そうなんですね」
「失礼します」
アリスは小さくお辞儀をして家に帰った。
その数日後、妹が首をかしげながら帰ってきた。
「なんか、最上階の奥様が微笑んで来るんだけど」
「良かったね」
母さんが答える。
「女の子と手を繋いでにこにこしてくるのよね、なんなんだろ」
「あ」
アリスが小さく声を出した。
なぜか。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み