第1話

文字数 552文字

 山形県庄内は食の宝庫だ。しかもその食は伝統があって個性があり美味い。
 先日、庄内に赴任して14年目にして初めて「麦切(むぎき)り」を食べた。
 麦切りは庄内地方で昔から食べられているご当地麺だ。小麦粉を塩水で()ねて細く切って作る。太さは讃岐うどんより細く、稲庭うどんや冷や麦よりは太い。そして麺の断面は丸ではなく平たい。昔から庄内地方では米のほかに小麦も栽培している農家も多く、各家庭で自家製で麺を打っていた。そこで小麦粉を練って切ったものを「麦切り」と呼んでいたことに由来するらしい。
 麦切りは原則、乾麺ではなく生麺のことを指す。生麺の麦切りの入った袋を持ってその重量感に驚いた。ズシリと重い。同じ大きさの砂袋の重さに匹敵する。
 麦切りの麺は茹でて冷水でキュッとしめて「冷」の状態で食べる。コシが強く、もちもちとした弾力がある。つるつるとした舌触り、滑らかな喉越しが特徴だ。薬味には山葵(わさび)(ねぎ)、生姜などを添える(写真↓)。

 ()(かく)、麺自体の味が濃くて強い。大地の持つ力強さを感じる。つけ汁は減塩の薄口では麺の味に負けてしまう。濃い口のつけ汁が必要だ。成る程、これはうどんとは明らかに違う食べ物だ、と感嘆した。
 庄内の肥沃(ひよく)で豊穣な土で育てられた作物はどれも味が重く力強くそして美味い。

 んだんだ!!
(2023年8月)
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