エンドロール、記憶を書き留めること

文字数 567文字

 君は、彼女の幸福を願った。彼女のことを愛していたから。心の底から。だから君は、彼女のもとから去った。君自身の存在が、彼女を不幸にすると思ったからだ。「俺では彼女を守れない。彼女にはもっとふさわしい男がいるはずだ。彼女のことを守れるような強い男が」と。
 しかし、彼女もまた、君と同じ心の痛みを覚えていたとしたらどうだろう? その引き裂かれたような胸の痛みを感じていたとしたら? そして胸にポッカリと空いた空洞に苦しんでいたとしたら? それらの苦痛に耐えきれなかったとしたら?
 そして君が、彼女の存在でなければその痛みを鎮められないように——その空洞を埋められないように、彼女もまた君の存在でなければ、その痛みを鎮められなかったとしたら? その空洞を埋められなかったとしたら?
 もしそうだとしたら、君は彼女のもとから離れてはいけなかったんだ。君は彼女のそばにいるべきだった。君が、彼女の本当の幸福を願うのであれば、なおさら……。
 「後悔先に立たず」、「覆水盆に返らず」だけどね。すべては終わっちまったんだ。君の映画は。あるいは君のゲームは。
 君の耳に聞こえるそれは、エンドロールさ。君にできることはたぶん、その記憶をどこかに書き留めておくことだけだ。それがだれかの役に立つことを願ってね。それがたぶん、君の存在意義だ。少なくともいまの。
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