第1話 HUMAN 1

文字数 1,052文字

 成人の年齢が20歳から18歳になった。ただ、なんでもすべて18歳になるわけではなく、20歳のままのものもある。お酒とかタバコとかは20歳のまま(べつにどっちもいらないけれど)。それから植物法。これは、いま議論の途中で、どうなるかわからない。
 ぼくは次の誕生日で18歳になる。もしそれまでに植物法の改正が間に合えば選択の権利ができる。できれば、改正してほしいと思う。ぼくは18歳になったら植物になりたい。

 植物法ができてから、もう15年になるらしい。人間を植物にする方法が実用化され、すぐさま希望者が募られた。植物になることを希望するものは、政府の施設へ行き、政府が管理している自然公園で、植物として生きていくことになる。人口の爆発的増加と、自然環境破壊の両方を解消する画期的な方法として、世界中で法律になった。

 20歳以上のもので希望するものは、だれでも植物になることができる。

 20歳以上であればだれでも植物になることができる、といっても、20歳ですぐに希望するものは多くない。ぼくがいま住んでいるエヌ国は比較的多いらしいが、それでも1%よりもはるかに少ない。ただ、年齢が上がるについてどんどん増えてくる。いろいろな心配をして暮らすよりも、まだ元気があるうちに植物になってしまおうという人はかなりいる。あとは、かなり例外のケース、死刑を宣告された犯罪者は、いまは強制的に植物になる(それで気持ちが救われたという犯罪者もいる)。20歳以下でも、治療の可能性がないと検査ではっきりした場合、いろいろな手続をするらしいけれど、親や本人の申請があれば、植物になることを認められる。

 植物になったあとは、もう家族はその姿を見ることはできない。政府が管理している自然公園は、関係者以外立入禁止となっている。なんの植物になるのかも教えてもらえない。場所や植物を公表すると、さまざまな問題が生まれる可能性が増えるので、これは厳重に守られている。『完全なコントロールで、大事に育てられ、次の代へと種子をつなげていくので、永遠に生きることになります』と政府は発表している。残されたものは、それを信じるしかない。もちろん、ほんとうにそうだと思うけれど。

 成人年齢が18歳になることと合わせ、植物法も18歳に引き下げるか、その話し合いがつづいている。もし引き下げられたら、18歳の誕生日から申請が許可され、申請してから半年以内に、植物になる。一度、植物になると、もう人間には戻れない。それでも、ぼくは、植物になりたいと思う。


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