プロット【幽霊編:学校の怪談と靴占い】
文字数 3,058文字
アルクの通う学校には靴にまつわる怪談話があった。
《雨の日、校庭にある池の真ん中に、ピンクの片方の靴が浮いているのを見てしまったら要注意。もう片方の靴を探している女の子の幽霊に”一緒に靴を探して”と池に引き摺り込まれてしまう》というお話。
それを聞いたアイリスは「オバケとお友達になりたーい!」と興味津々。幽霊や怖い話が苦手なアルクは「絶対無理!」と断固拒否。しかしロードが「もしかするとオバケじゃなくて、靴の妖精かもしれないわね。靴使いの修行のためにも確認する必要があるわ。」と言い出した(面白がっているだけのような…)。こうして3人はその夜、幽霊?靴の妖精?に会いに(ついでに靴使いの修行も兼ねて)学校へ忍び込もうという話になった。
夜。お父さんとお母さんが寝静まった頃。雨の降る気配は全くないのに、アイリスからレインコートを着て行くように言われ、しぶしぶ着ているアルク。ロードとアイリスの妖精の力を使って、自宅のおじいちゃんの靴箱から、学校の下駄箱へと移動する3人。
校庭の池の前に来たが、雨が降っていないので、当然池の真ん中に例の靴は浮いていない。するとアイリスが靴の姿に変身して「アルクちゃん!あたしを履いて雨乞いして!」と言った。レインブーツの妖精のアイリスが使う魔法は、靴(アイリス)を履いてお祈りする(舞う)と雨が降ったり、雨足を操ることができるというもの。「あ、あまごい…?」と思いながらも、アルクはデタラメなダンスのようなものを踊ってみた。すると本当に空から雨が降って来た。
しばらく校庭の周りだけに雨が降り続いた。しかしいつまで経っても池の真ん中に例の靴が現れることはない。「やっぱり怪談話は嘘だったんだよ」とアルクが池に背を向けた瞬間、池の中から白い手が現れアルクの足首をガッと掴んだ。
—————————————
【承】
池から現れた白い手に池に引き摺り込まれそうになるアルク。ロードとアイリスに助けてもらい、なんとか池の外に這い出たアルク。白い手の正体は幽霊ではなく、ロードの言った通り女の子の姿をした靴の
ハルは「十数年前、この学校に通っていた女生徒が、靴をとばして明日の天気を占う”靴占い”をしていた際、池に片方の靴を落としてしまった靴の妖精」だと3人に話した。それ以来、池の底に沈んだまま月日が経ち、いつしか石の下敷きになり身動きが取れなくなってしまい、助けを求めて人間の前に姿を表すようになったと言う。アルクはハルが言った場所にある池の底の石をどかした。するとボロボロになったピンクの片方の靴が現れた。
どうやら怪談話の真相は「もう片方の靴を一緒に探して欲しいと池に引き摺り込もうとする女生徒の幽霊」ではなく「石をどけて池から引き上げて欲しい靴の妖精」だったらしい。
するとアイリスからこんな質問が出た。
「でもどうして”雨の日”だけに現れていたの?
てっきり、あたしと同じ雨が大好きなオバケちゃんだと思ったのに。」
ハルは「随分前のことでハッキリとは思い出せないけど…」と言いながら、当時のことを話した。
「このピンクの靴を履いていた女の子は、靴占いをする時
”あーした天気になーれ”じゃなくて、
”あーした雨になーれ”って靴をとばしていたの。」
よくみると、靴底にはうっすらと「4-2 しみず いずみ」と名前が書いてあった。
いずみちゃんは、どうして雨が降って欲しかったんだろう?
もう片方の靴はまだあるのだろうか?
そしてハルは「いずみちゃんの元に帰りたいの。いずみちゃんを探して欲しい。」と3人にお願いした。こうして3人は、靴の妖精ハルの履き主、靴占いをしていた
—————————————
【転】
翌日、アルクは担任の先生に頼んで《しみず いずみ》を卒業生の名簿から調べてもらった。彼女は、15年前に卒業し、現在はファッション誌のカメラマンとして働いていることが判明した。
後日、3人とハルは《いずみちゃん》が働くオフィスビルの前までやって来た。しかし、子供のアルクは警備員に止められ、ビルの中へ入れてもらえず…。
するとロードが靴の姿に変身して「アルク、アタシを履きなさい」と言った。ハイヒールの妖精のロードが使う魔法は、靴(ロード)を履いた人間を靴のサイズにピッタリの姿に変身させることができるというもの。ロードは大人の女性用のハイヒール。つまり子供の足のサイズのアルクが履くと、アルクはたちまちハイヒールの似合うキレイな大人の女性の姿に変身するのだった。モデルのような姿に変身したアルク。こうしてアルク達はビルの中へ潜入することに成功した。
そして3人は遂にいずみちゃんを発見。大人の姿に変身しているアルクは「小学校の先生です!池に落ちていた靴を届けに来ました」と適当に嘘をついて、いずみちゃんに靴(ハル)を渡した。ビルの外では雨が降っていた。
いずみちゃんは、当時の真相を話した。
本当は、雨が降って欲しかったんじゃくて、虹が見たかったこと。
もう片方の靴はもう手元にないこと。
そして、虹を見せたかった
「病気で入院中だった友達に、街にかかる大きな虹を見せたかったんだ。
そして、その虹をバックに友達と一緒に写真が撮る約束をしていたの。でも、池に靴を落としてしまった後すぐにハルちゃんは大きい病院に移るために引っ越してしまって…。結局、虹の写真の約束は守れなかったし、それ以来ハルちゃんとも連絡取ってなくて…。」
(いずみちゃんの友達も「ハル」、靴の妖精も「ハル」…?)
もしかして…とアルクが思った矢先、ロードが「アルク!そろそろ魔法が切れるわ!帰りましょう!」と言った。慌てて話を切り上げて帰ろうとするアルク。するとハルは「アルクちゃん、すこし体借りるね。」と言ってアルクに憑依し、いずみちゃんに一言だけ話しかけた。
「いずみちゃん、ありがとね。わたしずっとここにいたよ。」
ロードの魔法が切れ始め、子供の姿に戻りつつあるアルクの姿に驚くいずみちゃん。そしてアルク達は逃げるようにその場を去った。完全に魔法が切れ、子供の姿になったアルクの後ろ姿と、手元に帰ってきたピンクの靴を見て、いずみちゃんは「ハルちゃん…?」とポツリと言った。
空を見上げると、雨は止み、大きな虹がかかっていた。
—————————————
【結】
3人がビルを出ると、ハルの姿は消えていた。
やはりハルは「靴から産まれた靴の妖精」ではなく「靴に取り憑いた幽霊」だったのだ。
アルクは靴(ロード)を脱ぎ、いつもの黄色のスニーカーに履き替えた。すると、アルクの黄色のスニーカーの星に光が灯った。どうやら今回の行いが靴使いの修行として認められたらしい。こうして靴使いとして一歩前に進んだアルク。
「雨が降った後は虹が出るんだよね。」
アイリスが空を見上げながら言った。いずみちゃんと同じく、3人もまた大きな虹を見つめていた。まさか、学校の怪談から、靴の妖精と一緒に幽霊のお願いを聞くことになるなんて…。こうして3人の不思議な冒険は幕を閉じた。
帰宅後。「これでもう校庭の池に浮かぶ靴の怪談話はなくなるね。」とひと安心していたアルク。何気なくお母さんにその怪談話について話してみた。
すると
「あら?その怪談話なら、お母さんが小学校に通う前からあったわよ。かなり昔からあるお話だったと思うけど……。」
つまり…ハルちゃん以外にもあの池には幽霊が出るってこと…?
少し背筋が寒くなるアルクだった。
※登場人物ページもぜひご覧ください