第1話

文字数 435文字

先日、まる2年間乗った車を乗り換えた。
僕は車に頼らない暮しがしたかった。
だから、この山里へ越して来てからも奥さんの車1台で済ませていた。
歩いて通える勤め先を選んで、山へもスキー場へも歩いた。
勤め人だった頃。
金はあったわけではなかったが、足りなくもなかった。
子供も2人。
あの頃は、それで良かった。
雨の中、雪の中、僕は寝かし付けに車を重宝していた奥さんの為に、家に車を置いて歩いた。
奥さんの車なわけだし、僕がそうしたかったのだから、何の問題もなかった。

長女が産まれ、僕が事業を始め、次女が産まれた。
僕の事業はうまく行かなかったから、時間的な余裕を失った。
その過程で、問題は発生した。
奥さんの車をいつも僕が使ってしまい、その為の不便に奥さんの不満が積もっていったのだ。

何度か大喧嘩をした。
うんざりだった。
夫婦仲は悪くなった。
そんな日々を数年過ごしたのち、僕はようやく自分の車を所有する決心をした。

金はなかったから、銀行でローンを組んで、村の車屋に並んでた安い軽のバンを買った。

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