第1話

文字数 1,067文字

人類はついに火星への移住を開始する。


かつて人類は、新しい土地を求め地球上を移動した。

その時の苦労を、火星移民たちはもちろん知らないし、そんな覚悟もない。

いや、そんなことなら火星になんか来なかった、とクレームの嵐が吹きまくるであろう。

つまり、快適な環境を先達である我々が作っておかねばならない。


分かるかな?

もちろんですよ、ボス。


インフラなどのハード面は、技術畑の皆さんが担当されるのですよね。

その通りだ。



と言うことは、ボス?


我々の任務というのは……

察しが悪いわね、相変わらず。


文化や習慣のことに決まっているでしょ?

地球と同じことをやるのか、火星独自のものを打ち出すのか、そういうことよ。

なるほど、そういうことですか!


ん?

でも、どうします?

地球と言ってもいろいろな地域から集まってきますし……。

うむ。

そこも問題なのだが、まずは君たち日本人のことを考えてくれれば良い。

そこを叩き台にして、次へ進めよう。

それなら考えやすくなりますね、ボス。


ではやはり、まずは地球と同じものを考えてみましょう。



文化、習慣といえば、なんといってもカレンダーが大事ですよね。


火星において暦はどうするんですか?


やはり太陽暦で?

ほお。

重要な点をついてくるじゃないか。


自転は地球の約24時間とほぼ同等なのだが、

公転は687日かかるから地球の約2倍が1年、ということになる。

ボス、それは重要なヒントですね。


火星年齢だと、私はまだ十代ですよ^^)


女性の移住希望者が増えそうです。



生き物として、若返ることはないでしょ(笑)。

それに十代って、まだサバよんで……ウッ、痛え!



それはともかく、そうすると地球年齢と火星年齢を併記しないといけませんね。

子どもなんかは、誕生日プレゼントをもらえるまでの日数が延びてしまうのですね。

やはりそこは難しいな。


ただ、天文系の連中は、火星では火星の暦を使うことを強く主張している。

太陽に合わせた暦とすれば、君の言う通り、地球感覚では待たされてしまう意識が強くなるだろう。


火星生まれが人口の大多数を占めるようになるまでは、仕方がないかもしれない。


太陽が二回昇って、火星の一日です、というのは無理ですかね?


つまり地球の48時間で1日。そうすると火星の1年は約344日。

その20日くらいのズレが結局出るのなら、あまり変わらない気がするな。
そう、ね……


暦がそうだとすると、地球で言うところの年中行事がスカスカになる。

そこを埋めるのが私たちの仕事。

でしたよね、ボス?

そうだ。


暦のことは連中が決めてしまうので、意見は言えない。


687日間のイベントを考えるんだ!



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色