第4話 肩で息を切らした羊飼い

文字数 508文字

次にこの屋台茶屋を訪れたのは、見た目から判断して羊飼いだった。何故かすごく肩で息をしている。そして、羊を連れていなかった。

道に迷ったのかと思い、どんな道順で屋台まで来たのか質問した。答えは羊を売った後、何かのシンボルが描かれた紙を踏んでしまったらしい。その直後から、影みたいな異形にここまでを追い回されたそうだ。羊飼いという予想は正しかったらしい。

勝手に振る舞った「草稿のリコール」の清涼感で、ひとまずリラックスはできたようだ。羊飼いが、ふと「寂しくなる」とこぼしたので質問してみた。深い絆で結ばれた羊を、家族の生活費のために今回売ってしまったらしい。二杯目(羊飼い自身の注文)を飲んでいるとき、「あの異形は、羊の想いが具現化した存在なのでは?」と突飛なことまで言い出した。踏んでしまったシンボルを模様として編み、手元に残すと決めたらしい。

席を立った羊飼いは、どこかスッキリとした表情になっていた。とはいえ、感情面では不安が残っている気が……。羊飼いは勘定を支払い終えた後、次に誰かが訪れる日の天気を予報してくれた。

影が映し出される程に濃い霧が、この街を覆うらしい。また、異形に追いかけ回される人が出ない事を祈った。
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