【批判とは2】批判と中傷の違いって?
文字数 1,541文字
前回は、「批判は悪」という図式はなぜあるのか、を考えました。
次に聞きたいのは、批判と中傷の違いは何か、です。
なぜそれを聞きたいと思ったの? その理由が解れば疑問の大半が解決するわ。
本当ですか? えっと……。
「批判は悪」という図式がよくないのは、「対立の中から新たな発展を目指す」という批判の価値が損なわれるからです。
でも、批判と中傷を区別しないのでは、やはりその価値は損なわれてしまいます。だから区別が必要なんです。
ごめんごめん。今の久恵里ちゃんの話を言い換えると、
・「対立の中から新たな発展を目指す」という価値があるのが批判
・そうではなく、単に対立しているだけなのが中傷
ということになるわね。
まだ原稿用紙1枚分も会話してないし、もう少しお願いします。
決定的な違いは、「根拠があるかどうか」だと書いてありますね。
じゃあ、「
このハゲー! 違うだろー!」は、
・秘書の頭髪は薄い
・秘書は自分の指示と違うことをした
という根拠があるから批判である、ということでいいかしら。
でしょ? でも、根拠はあるから中傷でもないことになる。じゃあ何なのかというと、どうやら「誹謗」にあたるようなの。
よく誹謗中傷と言いますが、誹謗と中傷は違うものなんですか?
はてなキーワードの記事を見るに、中傷が根拠のない悪口なのに対して、誹謗は他人をけなすこと一般に当てはまる、つまり根拠の有無を問わないようなのよ。
すると、根拠の有無という基準は、批判と中傷を区別できても、批判と誹謗を区別できないんですね。
そういうこと。だからこそ、「なぜ批判と中傷の区別を要求するのか?」という目的の段階から議論を始めたのよ。単に批判と中傷の差異を探すだけでは、目的を達成できなかったわけだから。
なるほど……。
あと、「批難」または「非難」というものもありますが、これは批判とどう違いますか?
もし「非難は感情的」説を採用するなら、国連が出す非難決議(condemning resolution)は感情的な言明であると主張せざるを得なくなるわ。それは変でしょう?
そうですね。それで、「対立からの発展」の視点では違いはあるんでしょうか。
国連の非難決議は、加盟国の政策に対して、改善や撤回を要求するものよ。国連と加盟国との間に何らかの対立があるからこそ現れるものと言えるわ。
じゃあ、批判と批難や非難との違いって、なんなんでしょうか?
・「相手に非がありその改善を要求する」に重点を置くなら批難か非難
・「対立の中から新たな発展を目指す」に重点を置くなら批判
ということじゃないかしら。
もちろん、両方を持ち合わせた言明も存在するけど。
批難や非難だからといって、批判でないとは限らない、ということなんですね。
そして、批判だからといって、批難や非難でないとも限らない、というわけ。
じゃあ、最後に、今回出てきた言葉を表にまとめてみますね。
この表、他人から何かを言われて、言い返したいときに役に立ちそうね。
「あなたの言明には根拠はあるが、対立からの発展も改善の要求も見出せない。それは誹謗である」といった整理ができるでしょ。
ただ、なんでもこの表のようにきれいに区別できるというわけでもないですよね。
そうね。批判と非難と誹謗とは、互いに重なり合う部分もある。その点は注意しなきゃ。
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