第2話

文字数 695文字

 キス事件の後、5時間目の歴史総合と、6時間目の数学Aは、全く集中できなかった。
 意識を授業に戻しても、すぐ成瀬が何を考えていたんだろうと、そちらに気が入ってしまうのだ。窓の外のイチョウの木の新緑なんかを ぼやっと眺めていたりする。

__クソ成瀬め。

成瀬と私は恋人でもなんでもない。むしろ、犬猿の仲と言っていいほど仲は悪い。成瀬がサル。私は犬というより猫っぽいので猫猿の仲と言うべきか。中高一貫のこの学校に入ってから、今まで何度、ちょっとした足の引っ張り合い合戦を広げてきたことか。
 中学に入りたての頃がクラスが一緒で一番ヒートアップしていた。
 当時、成瀬は、小さなサルという言葉がぴったりだった。小さくてよく日焼けしていて、運動好き。誰ともよくしゃべり大声で笑う。
 その当時は、異性とは話さない子も多かったけど、わざと小学生がやるようなドッジボールを男女数人でやって交流したい子たちもいた。そんな子たちにつきあって、成瀬も私も休み時間によくドッジボールをよくやった。成瀬は異性がどうというより、単にバカで幼稚だったからドッジボールがやりたかっただけだろう。
 球筋の強い私と成瀬は対立することが多く、怨念を込めたドッジボールの投げ合いで、お互いに当て合った。
 何度も狙われて当てられていると、イライラしてくる。ドッジボール以外でもお互いにからかい合うバトルを繰り広げてきた。
 成瀬は、どんなクラス内のピラミッドのどんな階層の男女とも屈託なく明るくしゃべった。でも、私とはなんか距離があった。

 因縁の成瀬とは、中学校2.3年生は、同じクラスにならなかったのに、今年は同じクラスになってしまった。






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