【ネタバレ注意】 前作『レ・ユエ・ユアン』あらすじ

文字数 4,863文字

 こちらのお話は、前作『レ・ユエ・ユアン』のあらすじを、凝縮してざっくりとまとめたものになります。

・『レ・ユエ・ユアン』は『ヨルコウ』と世界観を共有しておりまして、『ヨルコウ』一話の約三〇〇年後のお話が『レ・ユエ・ユアン』となります。
・前作は処女作のため文体も書き方も拙く、18万字もある長編。流石にしんどいです。自分だったら面倒です。そういった理由から、初見の方向けの世界観設定説明を書きました。
・以下からネタバレ満載ですので、ご注意、ご了承くださいませ。





▽▲▽ レ・ユエ・ユアンの物語について ▽▲▽

 生きる者の身体を溶かすという〝雨〟に支配された世界。人々は遥か過去の時代に現れた救世主、聖者ユリアスの教えに従って生きていた。白い肌を持つ人間・神子(みこ)のうち、〈剣の神子〉(けんのみこ)は、神剣を用いて〝雨〟を浄化できるが、かわりに自らの命を削らねばならない。聖者ユリアスの教えに従い、大陸中に神剣と〈剣の神子〉が散らばり、国を興し暮らしていた。

 イブ大陸南部の小国・アルマスで、〈剣の神子〉を守る騎士隊長を担っていたディルは、妻であり〈剣の神子〉であるユジェ、娘のメアリ、親友のレオとともに暮らしていた。隣国コラーダと同盟のやり取りを進めているなか、アルマスは突如、謎の男に襲撃される。〈剣の神子〉ユジェを刺し殺し、騎士達、ディルさえも鎧袖一触に討ち果たした男は、ユジェの心臓を抜き取り去っていった。

 三年後、アルマスの悲劇から唯一生き残ったレオとメアリは、「カイン」「クリスティ」と名乗っていた。神剣の欠片を持っていることから《首喰い》に命を狙われ、逃避行を繰り広げながら、アルマスに起きた真実を知るために各地を放浪していた。
 
 交易都市リットゥで、カイン達はマキナ、ロウと名乗る二人と旅商団(キャラバン)に出会う。マキナの執拗な誘いを受け、カイン達も旅商団に加わる。各地を旅するなかで、国と〈剣の神子〉を襲って滅ぼす《神子殺し》コルヴァ、そして〝黒鬼士〟という存在と出会う。しかし〝黒鬼士〟の正体はディルだった。親友であったはずのディルの口から、カインの本性は殺人鬼であり、ずっと恐れていたと告げられ、カインは苦悩する。

 《神子殺し》コルヴァによって世界の真実を知らされたカイン達は、イブ大陸を滅ぼそうとするノア人・ユリアスと、法王領ラ・ネージュが引き起こす戦争を止めようと奔走する。戦いの中で、カインは自分の〈魂〉が殺人鬼として造られたものだと知らされるが、危険な面をも呑み込んで生きる決意を固める。大陸中の〈剣の神子〉、帝国皇子たちの助けを借りて法王ユリアスとの決戦へ挑み、打倒する。ディルの自己犠牲によって聖地レ・ユエ・ユアンの雲は晴れたが、生き別れとなる。カインとクリスティは哀しみを乗り越え、人間らしい笑顔を取り戻す。


▽▲▽ 登場人物 ▽▲▽

・カイン(レオ)……主人公。金髪金眼で褐色肌の剣士。〝金狼〟と呼ばれている。
・クリスティ(メアリ)……カインが連れている、神子の少女。声が出せない。神剣『アルマス』の欠片を持ち歩いているため、《首喰い》に命を狙われている。
・ディル……アルマスの騎士。クリスティの父で、カインの親友。三年後に〝黒鬼士〟となる。
・ユジェ……アルマスの〈剣の神子〉。クリスティの母で、カインの親友。コルヴァに殺される。

・マキナ……燃えるような赤毛で褐色肌の女。父である皇帝の命で、旅商団を率いて神剣を集めていたが、ユリアスによって殺される。
・ロウ……金髪と青い瞳をした褐色肌の男。マキナの従者。

・シャーロット、ラルフ、ジェレミー、ステラ……各国の〈剣の神子〉たち。
・ベニー……アロダイトで奴隷をしていたラフェトゥラ二世の少年。
・アウレリア……法王領の神官。血縁的にはユリアスの実子。
・ユリアス……法王領ラ・ネージュの現法王。

・コルヴァ……《神子殺し》と呼ばれる青年。各国の〈剣の神子〉を殺して回っている。
・《首喰い》……賞金稼ぎを生業にしている者達。本質的にはごろつきに近い。


▽▲▽ 各章詳細 ▽▲▽

第一章:
 大陸南部の街アルマス。騎士隊長ディルは、友人であり騎士でもあるレオ、妻ユジェ、娘メアリ等と助け合って暮らしていた。妻であり〈剣の神子〉でもあるユジェの命は、力の代償として使われてまもなく途切れてしまうが、残り少ない日々を大切に生きていた。
 そのころアルマスでは数年前の大戦の反省から、隣町コラーダと同盟の話が進んでいた。調印式当日、〝雨〟が降る最中で同盟調印を進めるディル達だったが、悲劇が起こる。突然、何者かによってユジェや住民たちが襲われ、アルマスは浄化されないまま、〝雨〟に呑み込まれてしまったのだ。

第二章:
 三年後、大陸西部の交易都市リットゥに〝金狼〟と呼ばれる剣士カインと、声を失った少女が居た。彼らは故郷アルマスが滅びた原因を知るため、神剣『アルマス』を探し求めていた。《首喰い》と呼ばれる賞金稼ぎに素性が知れてしまい狙われるふたりは、旅商団に合流して追手を巻こうとするが、そこで奇妙な赤毛の女性マキナ、従者ロウと出会う。
 護衛を完遂すれば首に掛かった賞金を取り下げさせると約束され、彼女の旅商団と旅をともにし、エルムサリエ帝国へ向かう。一行は、旅をするなかで《神子殺し》なのではと噂されている〝黒鬼士〟、そしてもうひとりの《神子殺し》を目撃する。

 帝国に到着したカイン達は、エルムサリエ皇帝ハイデンベルグと謁見。そこでマキナの正体が、帝国の第三皇女だという事を知る。帝国と法王領との対立。〝黒鬼士〟討伐のため、各地に皇族や臣下を派遣しているが、状況が芳しくない事。カイン達もまた、報酬と引き換えに協力を求められる。マキナは皇女でありながら戦えない身であることを理由に、皇帝に冷遇されていた。彼女が砂漠への視察を命じられ、同行を命じられたカインは、皇帝の言い様に皮肉交じりに応じる。

第三章:
 帝国船を使って海を経由し、北部へと向かう一行だったが、途中で〝雨〟によって滅びたばかりの港町・ドゥリンダナを見つける。亡骸を葬り、神剣『ドゥリンダナ』を回収。一行はロンゴミアント大砂漠へ向かう。そこで奴隷やかつての砂漠の民が隠れ住んでいる里を見つけるが、カインはラフェトゥラ人の生き残りに強く恨まれていた。だがカイン自身には恨まれる程の行いをした記憶が全く無かった。引き受けた任務を終えたカイン達はマキナ達と別れ、東へ。立ち寄ったアロダイトでは人身売買の現場を目撃するが、元奴隷のベニーを助けつつ、目的地のトリアに向かう。トリアに到着した晩、再び〝黒鬼士〟と《神子殺し》コルヴァが戦っている場に出くわす。
 そこで見たのはかつて死んだはずの親友・ディルが化け物のようになって、〝黒鬼士〟として変わり果てた姿だった。

第四章:
 再会したディルから、レオ(カイン)が妻ユジェに片想いしていたと知っていた事、そして残酷な殺人鬼の顔も持っているカインを嫌い恐れていた事を明かされ、衝撃を受ける。クリスティが声を失った原因も、カインの冷酷な殺し方を見てしまったからだった。
 翌日、既知の仲である〈剣の神子〉ステラと再会したカインは、その話を彼女に伝える。その場に居合わせた法王領ラ・ネージュの神官・アウレリアは、法王領でなら何とか出来るかもしれないと話し、カイン達を法王領へと連れて行く。カイン達は法王ユリアスとも会う事が出来たが、有力な手は見つからず、法王の助言に従って一路コラーダを目指す。

第五章:
 コラーダの蔵書を調べていたカインは、そこでマキナからの暗号を見つけて、彼女のかつての研究室を訪れる。そこには、マキナがふたりを導いて大陸中を巡らせていた事を示唆する、遺書めいた内容の手紙があった。
 研究室を出た途端、帝国の伝令兵によってマキナが死んだ事を知らされる。衝撃を受けるふたりだが、その場に現れた《神子殺し》コルヴァによって、無理やり聖地レ・ユエ・ユアンへ向かわされる事になる。
 
 レ・ユエ・ユアン内にて、もう一つの世界・ノアの存在を明かされる。ノアによって支配されてきた歴史と、これから起こる戦争の目的を知らされ、コルヴァからは諦めて命を差し出すよう求められる。そこへ、テミスと名乗る機械体(サイボグ)の女性が現れて足止めを買って出てくれ、ふたりはノアを脱出。
 神官アウレリアと再会したカイン達は、マキナの死を機に起きてしまった戦争を止めるため、法王ユリアスとの謁見を願い出る。アウレリアは快く応じて立ち入り禁止区域から法王のもとへと案内するが、彼女はもはや、ユリアスによる生きる操り人形と化していた。法王領のほとんどの人間の〈魂〉はユリアスの支配下にあった。それどころか、帝国皇帝ハイデンベルグですら、ノア人である〝劫火〟に支配され、その手に落ちていた。
 法王ユリアスこそが、イブを裏から支配して、戦争を引き起こし滅ぼそうとする黒幕だった。逃げ場を失ったふたりは捕まってしまい、カインは身を挺してクリスティだけをどうにか逃がす。

第六章:
 クリスティはトリアに向かったが、すでに占領されていて途方に暮れる。しかしベニーと再会する事が出来た。ベニーの案内で、リットゥ付近に置かれた帝国の前線基地へとたどり着いたクリスティは、クリフと再会。クリフの正体は帝国第二皇子でマキナの兄のクレフェルドだった。他にも、旅の中で出会った〈剣の神子〉ラルフとジェレミー、ステラなどが合流。
 前線に戻って来た皇帝ハイデンベルグ、それを乗っ取っている〝劫火〟という存在と戦闘になる。クレフェルドが応戦するも、〈魂〉を身体能力に利用できる〝劫火〟の力に苦しめられていた。そこへ〝黒鬼士〟ディルが突如現れ、〝劫火〟を斃すと、クリスティにノア人の殺し方を伝える。
 そのころ法王領ラ・ネージュの地下では、カインがユリアスによる拷問を受け苦しんでいた。ユリアスから、カインが残酷な殺し方を好んで、かつ記憶を失ってしまうのは、ノア人による〈魂〉の性質付けによるものだと知らされる。苦しみの中でカインは、過去、そして自身が人に与えた痛みを認識し、自我を克服する。生死を彷徨うが、クリスティとステラによって救出された。
 助けられたカイン、そして帝国第一皇子フォルクハイム、〈剣の神子〉シャーロットなどを加えて勢力を拡大した帝国軍は、法王領の軍と激突する。操られていたアウレリアは、ユリアスの手によって自害させられてしまう。

第七章:
 カイン達はフォルクハイムとともに法王領へと侵入し、クレフェルドと再会する。彼らの助けを得たカインは、遂に法王ユリアスの元へと辿り着く。熾烈な戦いの末ユリアスを倒すが、ユリアスは今度はロウの身体を乗っ取って、動かし始める。クリスティの騙し討ちによってロウを制したが、ユリアスはロウの身体を返そうとはしない。ユリアスが生きている限り操られた人々は止まらず、戦争が終わる事は無い。カインは……。

 決戦を制したふたりは、《神子殺し》コルヴァを追って行ったディルに会う為、聖地レ・ユエ・ユアンへ向かう。そこには赤い瞳になったコルヴァだけが立っていた。しかし、〈魂〉と人格はディルのものだった。
 ディルは集められていた〈魂〉を使って二つの世界を分断しており、カイン達の叫びも空しく、レ・ユエ・ユアンは消滅。聖地を永遠に覆っていた〝雨〟も消え、ふたりを陽の光が照らした。ノア側に残されたディルは最後の仕事として、目覚めの時を待つノア人たちを殺戮していった。

 三年後、カインはベニーと共にラフェトゥラ島に向かう。彼らの怒りを受け止め、殺される覚悟である事を伝えると、ラフェトゥラ人からは「家族の奪い合いはもう必要ない」と言われ、過去の罪を赦される。イブ本島に戻ったカインは、後を追って来たクリスティに怒られ、もう死のうとしない事を約束する。〝金狼〟と呼ばれ、冷徹で感情の無かったカインの顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
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登場人物紹介

ルネア

かつて大陸東部に存在したティ・ルフ王国の女王。〝永妃〟とも呼ばれる。

心優しく博愛的な女性で、やや抜けている所がある。

実はノア側の人間で、王族の〈魂〉を乗っ取って生きている。

ジョゼフ

ルネアの側近。王家に従者として代々仕える一族の末裔。名うての剣士。

忠実で礼儀正しく、気遣いに長けており、影からルネアを支えている。

褐色肌で、白い髪と青瞳を持つ。

テミス

ノア人で、ごく一部の臓器以外が機械でできている機械体(サイボグ)の女性。

反政府組織〝アナンシの炎〟に所属している、リーダー的存在。

ルネアの姉。冷静かつ生真面目で、正義感に溢れる性格。

ロミネ

ノア人。〝アナンシの炎〟の一員。テミスの片腕兼、事実婚状態の恋人。

常に明るく朗らかで、どこか頼りなく見えるため、周囲の人からよく好かれる。

テミスと妹ルネアに対して並々ならぬ感情を抱いている。

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