第8話

文字数 1,717文字

幽霊姿のヒナを見てソウが「あなたは」と口にするとヒナが口を開いた。

「ソウはここに居ちゃいけない、だってソウは悪魔時代の人間で幽霊だから」

「今の俺は幽霊じゃない生きてる」

「令和時代の蒼と陽菜が私達みたいになって良いの」

「どういう意味だ」

「リンが皆に知らせたから天使と悪魔は争い消滅し私達は引き裂かれた、令和時代の凛が蒼と陽菜を引き裂こうとしている」

「…俺は陽菜さんが…うああー」

「ソウ!」

苦しむソウにヒナが触れようとしたその時、ソウの身体の中にある黒い羽が抵抗しヒナを弾いた。

「ソウ…本気で令和時代の陽菜を」

苦しむソウを見つめながらヒナは背中に生えている白い羽を1枚、取りソウに持たせると抱きしめ口を開いた。

「白い羽と黒い羽、力を合わせてソウを守って」

「……」

苦しむソウが静まるとヒナはソウから離れ口を開いた。

「ソウ、復活した命、無駄にしないでね」

「ヒナ、ありがとう」

「ソウ!記憶が」

「白い羽のお陰で記憶が戻った」

「良かったわね」

「ヒナ」

「私、逝くね」

そう言って幽霊のヒナが消えようとしたその時、ソウがヒナの手首を掴んだ。

驚いた顔でヒナが見つめるとソウが口を開いた。

「令和時代の蒼と陽菜と凛の争いを解決したらお前を生き返らせる」

「そんなことできるわけ」

「今の俺なら何でもできる」

「……」

「俺が呼ぶまで待っててくれ」

「待ってる」

「ヒナ、愛してる」

そう言ってソウが手を離すと消えながらヒナも「私も愛してる」と言って完全に消え景色も元に戻った。

ソウは目を閉じ身体の中にある白い羽と黒い羽に向かって「俺に力をくれ」と口にすると黒一色の長い髪と長い服が白と黒に変わり背中に生えている羽も右は黒い羽、左は白い羽に変わった。

そこへ陽菜が現れた。

「ソウさん」

「……」

名を呼ばれ振り返るとソウは陽菜に近づいた。

「記憶が戻った」

「そうですか、良かった」

「陽菜の家で話そうか」

「え…」

突然、ソウにお姫様抱っこされ陽菜が驚いた顔で見つめるとソウは人々に見られながら上空を飛び陽菜の家に向かった。

それから暫くして陽菜の家の前に着いたソウは降り立ち陽菜をおろし立たせた。

その後、陽菜とソウは家の中に入り陽菜は靴を脱ぎ寝室に向かうと陽菜とソウは中に入った。

陽菜がベッドに座るとソウが口を開いた。

「今の蒼は記憶を失っている」

「本当ですか」

「そんな蒼を凛は手に入れた」

「…凛が…」

「今の凛は危険だ、天使時代のリンにならないうちに助けないと」

「どうやって?」

「ここにイツキとレンとウタの生まれ変わりを呼ぶ」

そう言って黒い羽と白い羽がついた天使と悪魔の杖を出現させ掴むと床を叩き樹と蓮と詩を寝室に現せた。

「詩!」

ベッドから陽菜が立ち上がると詩は近づき口を開いた。

「何でここに居るんだ?」

「俺が呼んだんだ、君達の力を借りたくて」

ソウが口にすると樹が口を開いた。

「俺達の力って何の力ですか?」

「樹さんはイツキの力、詩さんはウタの力、蓮さんはレンの力、その力を俺にください」

「俺と蓮にわかるように説明してください」

詩がソウに向かって口にすると陽菜が口を開いた。

「詩、解決したら話すから今はソウさんの言う通りにしてくれ」

「わかりました」

詩の代わりに蓮が返事をするとソウが陽菜に向かって口を開いた。

「陽菜さん、今から始めます」

「俺は?」

「陽菜さんは蒼の側に居てあげてください」

「わかりました」

「樹さん、詩さん、蓮さん、俺の側に」

「わかりました」

蓮がソウの側に近づくと詩と樹も側に近づいた。

「始めます」

そう言ってソウは杖を掴んだまま目を閉じ力を込めると杖が悪魔の樹と蓮、天使の詩の力を吸い始めた。

30分後、樹と蓮と詩が倒れると目を開きソウが口を開いた。

「終わりました」

「詩達は?」

「大丈夫、暫くしたら目を覚ます」

「良かった」

「俺、1人で凛に会ってくる、陽菜は3人を見ていてくれ」

「俺も行きます」

「ダメだ、今の凛は君の知ってる凛じゃない」

「……」

一緒に行けないことに陽菜が落ち込むとソウが口を開いた。

「そんな顔しないで俺が蒼を連れてくるから」

「…わかりました…蒼さんと凛をお願いします」

「……」

無言で頷くとソウは寝室から消え陽菜は無事を祈った。
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