第1話 冒険者の収入

文字数 1,057文字

 カラン、コロン!木の扉が開くと鈴の音がなった。同時に猫耳がピクッと動く。
「いらっしゃいませ」
全身を鎧で包まれたものが入ってきて、多分こう言った。
「俺の税を計算して欲しい」
声が小さい。

猫耳が答える。
「承知しました。お手元のギルドカードを拝見しますに、冒険者の方でよろしいでしょうか。」
「そうだ」とぶっきらぼうにうなずく。

真っ黒なトンガリ帽子を取り、うやうやしくおじぎをしながら、
「ご挨拶が遅れました。私、冒険者から宿屋、はたまたギルド経営者まで多種多様な税を幅広く取扱います、税金師の猫マムシと申します。そして、奥にいますは当法人の代表税金師 鷲ノ金_わしのがねです。」
鷲ノ金が会釈をする。

鎧の方は、挨拶など要らないと言わんばかりの態度で、椅子に座る。猫マムシと違って、鎧の方は随分急いでいるようだ。何より偉そう。

それもそのはず。冒険者の税金は今月末が期限である。遅れると罰があることに加え、各種の税は計算方法が異なり複雑となるため、素人では手が出せない。おかげ様で、こうして我々税金師の元にやってくるものは後をたたないのである。

冒険者の場合は、主に2種類の税金が課されることが多い。クエストに応じて、ギルドから貰うお金に対するクエスト税。
ダンジョンで獲得したモノを販売した際の利益に係る、ダンジョン税となる。

前者のクエスト税の場合には、報酬を受け取る際に既に前納として、一律5%が天引されている。
一方で、ダンジョン税の場合には、獲得したモノと、獲得及び販売するのにかかった経費を差し引いた金額に課税される。

猫マムシが尋ねる。
「1年間のクエストの報酬を確認したいと思います。ギルドカードの年間報酬額を開いて頂けますか。」

鎧の方がカードを操る。
「なるほど。年間で500万の報酬でしたか。そうしますと前納された金額が500万×5%で25万ですね。」
中間に位置するC級冒険者の年間報酬が600万なので、ほどほどに稼いでいるといったところか。
「それでは次の質問にうつります。今年中に、クエスト以外で獲得されたお金もございますよね?」

「いやぁ…まあ、、」

声も小さく歯切れも悪い鎧に対して、猫マムシは笑顔で続ける。
「ダンジョンで獲得したもの、ありましたよね?武器屋に売ってませんか?」


「その…ダンジョン税ってお高いんでしょ?」
どうした。急な通販。

猫マムシは優しく答える。
「ダンジョン税については、むしろクエスト税と併せて安くなることもあるんですよ」

「なに⁉︎今までずっと高いと思って隠してたんだよぉ~~」
どうした。急なギャル。
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