第2話 冒険者の費用

文字数 1,238文字

 「むむむ⁉︎」
鎧の方が、面白いように驚いてくれる。

ダンジョン税では、ダンジョンで宝物等を取得するためにかかった費用や、それを販売するための費用を控除できる。
例えば、ダンジョン内での飲食代や、宝物等を売る為に業者へ支払った仲介手数料などを収入額から控除することができるのだ。

猫マムシが、費用について一通り説明する。その後、鎧の方にこう聞かれた。
「なるほど。費用については分かったが、それでクエスト税もダンジョン税も安くなるってのはどういうことなんだ?」
猫マムシがにやりとして、こたえる。

「今回のダンジョン税にかかる費用には、隠されたもう一つの控除があるのです。それが冒険者控除です。これは、国が認定した商店に販売する際にかかった仲介手数料については、一定の限度を基に、控除額を最大2倍にできる制度です。ギルドカードのダンジョン明細で入出金を確認できます。」

鎧の方が、そんなの初耳だと言わんばかりにこちらを見てくる。
当初のぶっきらぼうな態度とは打って変わって、しおらしく可愛くなってきた。
外見は鎧を纏ったものだが、脱いだらそれはそれは可愛い幼女かもしれない。

「ダンジョン明細…これだな!」
野太い声が響く。なんだ、ただの鎧をまとったオッサンだった。


「…はい。では、気を取り直しまして。」
「気を取り直して?」
「いえ、こちらの話です。」

猫マムシが続ける。
「ダンジョン明細を確認しますと、認定店での宝物等の売上が300万、仲介手数料が120万ですので、300万から120万×2を差し引いた60万となります。」

「更にその他の認定店で購入された食料や、回復薬なども控除の対象となります。他地方の名称もありますが、遠征などもされてるようですね。その際の宿代や移動代も差引けますので、、そうしますと、利益は約△マイナス40万となります。」

「あげなす…⁉︎」
両手をあげて驚く鎧の方。くそ。また可愛い仕草をしおって。なんだよ、あげなすって、美味しそうじゃないか。

「いえ、マイナス、つまり赤字となります。」

「しかし、マイナスと言うが、宝物等を販売したお金は残っているぞ?」
「はい。その通りです。しかし、お金を払ってなくとも費用にできるのが冒険者控除なのです。」

「なるほど」

鎧の方は、分かったように頷いている。だが、、おそらく分かっていないだろう。実際にお金を払っていないのに、費用にできる。普通の感覚であれば、納得しにくいものだろう。だが、鎧の方は、なるほどと言うので、このまま話を進める。

「結果的に、クエスト税の所得は500万、ダンジョン税の所得は△40万。合計460万が貴方の所得となります。」

「ふむふむ」

「また、460万の5%は23万。既に前納している金額が25万ですので、2万の還付ですね。」
数字ばかりで噛みそうになった。

「ふむふむ。ふえぇ⁉︎お金が戻ってくるの⁉︎」
のけぞりながら、間の抜けた声をだす。

ほえぇぇ。何この鎧、ほんと幼女。

そのまま必要な手続きを終えて、鎧の方に申告書を手渡した。
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