第3話 冒険者の申告

文字数 1,070文字

ゴホン。不意の咳払い。

「この冒険者控除制度は、認定店での支払にのみ適用されます。」
綺麗で透き通るような、声が聞こえた。

赤い蝶ネクタイに、青地の服を見に纏いスラリと横に立つ。
どこぞの名探偵のような出立ちですが?

猫マムシの目線など気にする様子もなく、鷲ノ金は続ける。
「そのため、冒険者は仲介手数料が多少モグリより高くても、認定店を利用すべきなのです。また、認定店に関して、国はその店を把握できますので、そこから税を取れます。認定店も、モグリより優遇されているので、冒険者が多く利用してくれます。まさに買手良し、売手良し、国良しの、三方良しとなるわけです。」

鎧を身につけている為、表情が見えないが。おそらく、ポカンと口を開けてるであろう鎧の方_ようじょが言う。

「なるほど。今後は必ず認定店を利用するようにしよう。勿論、申告の手続きは鷲ノ金先生のところにお願いするよ!(きらっ☆)」

こらこら?計算して手続きしたのは、私猫マムシですよ?鎧で何も見えてなかったのかな(きらっ☆)?

鷲ノ金も「えぇ、全て私がやりました(きりり)」感を出しながら、頷いている。


そうして、鎧の方改め幼女は満足そうに、事務所から出て行った。


「ありがとうございました」
猫マムシの声が響く。遅れて、扉の鈴も音がする。
からんころん。
当初の、慌しさのあった音とは異なる、心地よい音色であった。

「鷲ノ金先生、また1人顧客が増えましたね」

「そうだね。猫マムシ君、きみのおかげだよ。いつもありがとう」
これである。雇われの私に、きちんと感謝してくれる。

オレ様とのさばる事務所なら、とうの昔に独立していただろう。世のトップや上司達も、赤い蝶ネクタイを身につけて推理しろとは言わないが、この随所で部下への感謝を伝える彼の姿勢は、見習うべきである。

「猫マムシ君、このまま夜ご飯でもどうですか?」

そう言えば、外は暗くなっている。
もうこんな時間か。
「はい!ご一緒させてください。私は片付けてから向かいますので、先生は先に始めてて下さい。」

片付けを済ませ、事務所から飲食店が並ぶ街に向かう。

夜道は暗いが、歩けない程ではない。
女性や高齢の人には、怖いと感じる暗さかもしれない。
一方、この街で納税が進むことで、最近街灯が建つようになった。私達のお金で建つわけではなく、街の皆のお金が財源ではあるが、その一助を担えてることを嬉しく思う。

だから、私はこの暗い夜道が、街灯で明るくなってきたところを歩くのが、とても好きなのである。

そんな気持ちに浸っているうちに、賑やかな飲み屋街に着いた。

さて、先生のいつものお店は…
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