001 春、変態との遭遇。1

文字数 1,018文字

入り口に貼り出された座席表で自分の名前を確認すると、私は教室の奥へ向かってまっすぐに足を進めた。賑やかな教室の中を歩いていってどさりとリュックを机に下ろす。
一番後ろの廊下側から2番目。今日からここが私の席となる。

新学期特有の高揚感漂う教室をぐるりと見渡しながらリュックを抱えて机脇のフックへと手をのばすと、高めの位置で一つ括りにしている髪がさらさらと頬に落ちてきた。
正直に言えばとってもジャマくさいのだが、私、髪だけはキレイだねって褒めてもらえるのだ。数少ないチャームポイントをむざむざ手放すアホがいるだろーか。いや、いない。
大事な髪の毛を片手でまとめながら顔をあげた瞬間、隣の席の男の子とがっつりシッカリ目が合ってしまった。


「「 !!! 」」


びっっーーーくりしたあ・・・・・・・・
驚きすぎてドッキンドッキンする心臓を庇いつつ、私は目の前のお顔に「おやっ」と首をひねった。

んんん? この顔どこかで見たことがある。

黒髪の私とは対照的な色素の薄い髪色と日に焼けた肌。
切長の目元が印象的な、この、爽やか~なイケメン君は・・・・・

「!!!」

彼が誰であるかを思い出した途端、私は内心ギャーーー!!と頭を抱えて苦虫を噛み潰した。初対面ではあるが、私は彼のことをよおく知っていたからである。
・・・いや違った。私だけじゃない。みんな知ってる。
だってこの人、物凄い有名人なんだもの。それもとんでもなく悪い内容で。

ショックで声も出ない私に彼は構わずニッコリと微笑んでみせた。
そして。



「ねえねえジブン、いいオッパイしてるね」
「ーーーーーハア?」



噂には聞いていたが、このひとってホントにこう(・・)なのーーー!?
目を剥いたままフリーズする私のことなど気にも留めず、彼は朗々と自己紹介をはじめてしまう。
「俺、四月湊(わたぬきみなと)。『四月』って書いてワタヌキって読むんだ。ホントは『四月一日』って書くワタヌキさんのほうが普通なんだけど、俺んちは『一日』部分がヌキなわけ。でもって俺の趣味はオッ・・・・「もういい、皆までゆーなもう結構ッ。説明してくれなくてもゼンブ知ってるから!!」
平手を掲げて強引な制止をかける私に彼がぱちくりと目をしばたいた。
「俺のコトしってるの?」
「もちろんッッ(悲)」

こっ、このドアホウがーーー
知らないわけないじゃないか。むしろオマエ自身が己の評判についてよく知っておけ。

そう。

だって彼は。
四月くんは。



「おおい、オッパイ!! おまえも4組か。ヨロシクな~~~!!」




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登場人物紹介

県立門島高校 主要人物をざっくり


2年4組 

 四月 湊(わたぬき みなと)/ オッパイ

 桃田 まこと(ももた まこと)

 井久田 希望(いくた のぞみ)/ のんちゃん

2年8組

 森田 健吾(もりた けんご)

 立花 梓(たちばな あずさ)

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