第3話 懐かしい学生の日々

文字数 401文字

 ある日、なけなしの小銭をズボンのポケットに入れ、自宅を後にした。秋も深まり、肌寒い気候になっていたが、なぜか私の額は汗ばんでいた。汗を拭うと、汗の冷たさに驚いた。ふらふらと歩くと、あのラーメン屋の前にたどり着いた。のれんをくぐった。
「ご注文は?」
「しょうゆトンコツの大盛り」
運ばれてきたラーメンを眺めると、『働いていた頃は、自分へのご褒美として、このラーメンをよく食べたなぁ…働いていた頃は…』と思い、居た堪れない気持ちになった。レンゲでスープをすくい、口に運んだ。すると、なぜか宮崎での学生の日々を思い出した。昼夜を問わず研究に没頭した日々、目標とする職に就くために努力した日々、研究室の仲間と人生について真剣に議論した日々、このラーメンと共に過ごしていた充実した日々を思い出せたのである。

《このままではいけない!》

《前向きに、懸命に生きていたじゃないか!》

という強い思いが私の頭の中に溢れ出した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み