1、過去からの魔手
文字数 2,087文字
駅から続く商店街が住宅街へと変わる境目に、小さな花屋がある。季節は春。色とりどりの花が店内をにぎやかに彩っている。
店内では、若い花売りの女性がラッピングペーパーとリボンの準備に余念がない。他に店員はいない。
花売りの女性が顔いっぱいを笑顔にして男性を迎える。
やがて、綺麗にラッピングされリボンがかけられた花束が出来上がる。
肩越しに花売りの女性に笑顔を送る。微笑み返す女性。
花売りの女性は手を止めて入り口に顔を向ける。
男性の顔を見て、花売りの女性が息を飲む。
近くに住む坂田さん母娘だ。
リンから放たれた呪力が空気を揺るがせ母子に迫るのが、サイアには見える。
しかし、リンの呪力が親子に達するのが一瞬早かった。二人は、店内に一歩足を踏み入れた姿のまま彫像のように凍り付いた。
ケンが運転席、リンがと助手席に飛び込み、ケンが車を発進させた。