第1話

文字数 1,468文字

出生数の背景にあるもの

昨年の出生数が過去最低を更新したという
このままでは日本は この世界から
消えてしまうほどの急激な勢いらしい
この背景にあるものは何か
それは 今やこの世界を覆うある疫病である
コロナウィルスのようにこの世界を席巻する
経済合理性という病の大流行である
それはコスパ タイパという変な言葉で
言い表されているある空気である
映画を早送りで見る 本を速読術とやらで読む
最低限の労力で最大限の利益をあげる
これこそが我が社会の至上命題なのだ
少なくとも日本社会はすべてがこの原理で
回っている さもしいだけの単純な原理だ
彼らは まず 受験というものでこのことを学ぶ
自分の能力に合わせてできるだけ少ない努力で
効率よく勉強してできるだけ偏差値の高い学校へ
そして 入学したら やはり できるだけ楽して
できるだけいい成績をもらえる授業を選ぶ
そして できるだけ大きな企業に入社して
できるだけ楽してできるだけ多くの給料を得る
こんなことが成功体験となって沁みついている
若者たちが結婚しても子どもなど望むだろうか
結婚するまではいいとしても 経済合理性から
考えれば子どもほどコスパ タイパが悪いものは
彼らの人生には今までなかったものだから
子どもなど育てても病気だ不登校だいじめだと
苦労の連続で大金をはたいて大学に行かせても
出した金は決して戻っては来ないし 
自分たちの老後の面倒など見てくれる筈もないし
つまり 何の見返りもないことは明白なのだ
だからごく当然の成り行きによって
出生数が毎年最低を更新するのは必然的なことだ
これは何も若者が悪いのではない
経済合理性を何よりも優先させる社会にあって
彼らはそれを正しく学習しただけのことである
どんな対策をしたところで子どもの数は増えない
それはブーメランのように戻ってきた
自ら仕掛けてしまった罠のようなものである
この国は自ら仕掛けた滅亡の罠に見事に嵌ったのだ
これは近代において伝統的な文化や地域の絆が
急激に破壊された日本のような国で特に顕著な現象である

コスパ タイパの果てには何があるのか
人生には果たして生きる意義などあるのか
コスパ タイパ至上主義から考えると
人間は生きることをやめることこそが
経済合理性からは正しいことに
なってしまうのではないかと思われるのだが


 ファンレターさまの紹介

 コスパ タイパよりも尊い幸せ

出生数が減少し続けていることは深刻な事態なのだと改めて考えさせられました。経済合理化という問題が妨げになっているのですね。子どもにかかるコストは莫大で成人しても、大学で財産のかなりの部分を使い、卒業しやっと就職して一安心の筈が、上手く行かず早々と退職することも十分あります。親は脛をかじられ続け、時間も湯水のようになくなり心配事も沢山あり辛く悲しいことばかり。コスパ、タイパ重視の世の中では出生数が減少するのがよくわかる気がします。更にここ数年で追い討ちをかけたのは、コロナと戦争ではないでしょうか。コロナで地域のコミュニティが激減し、今までの伝統や行事はやらなくても特に困らなかったので、コスパ、タイパを考えるとこれからもやらなくても良いのではないかと楽な方に流れてしまったと思います。又、戦争は暗い影を落とし、こんなに不安定で先の見えない世の中では希望が持てない。自分達の生活だってどうなるのかわからないのに、子どもなんて持てない。と思慮深い今の若い人達は思うでしょう。コスパ タイパよりも尊い幸せがあるのだと気付いて欲しいのですが、私も先の見えない未来を憂いている一人なので何とも言えないのが現実です。
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