Log:000 機動都市

文字数 1,087文字

Limit 72:00
Loc 極東第一次防衛ライン
View 観測衛星『サクヤ』


それはかつて、人類と地球を再生するための砦だった。
その無機質で巨大過ぎる一歩がまた、歩んできた人類の歴史を灰塵へと還す。
今、京都市が地球上から姿を消した。
京都市だけではない。
世界中で山のような巨大人工物『機動都市』が、人類の遺産を踏み潰しながら『エデン』を目指している。

すでに人類が地上から姿を消して100年が経とうとしているが、人類はまだ完全に滅びてはいない。
汚染が進んだ地球を捨て、火星への移住計画を前倒しする声も確かにあったが、事態は生活圏を変えたら済むという問題ではなくなっていた。
精神と肉体を切り離す事でそれぞれの長期保存を可能とする技術を得た人類は、地球を再び人間が生活できる環境に作り替えるため、機動都市に肉体をコールドスリープさせると同時に地球自身へのテラフォーミングを実行させた。
100年後には人類と地球は再生されている、そう信じて……。

約束の日まであと数年と迫った現在。
突如いくつかの機動都市が一斉に進路を変え、暴走を始めた。
それらが向かう先は精神の保管場所、エデン。
エデンが破壊されれば地球は再生出来ても人類は死滅する。
悲劇的終末を回避するため、今まさに人類の総力戦が始まろうとしていた。


観測映像が閃光に包まれ中継が途切れる。
ノイズ交じりに通信が回復した映像には、巨大なクレーターが映し出されていた。
目標の『日本第3機動都市』に対し核兵器を使用したのだ。
だがその中でも四足歩行の巨大都市は、何事もなかったかのように再び歩き始めた。

テラフォーミングのために搭載された機動都市の標準装備『バリアシステム』。
それはいかなる攻撃でも外部から破る事は出来ない。
例え全世界の核ミサイルを叩き込んだとしても傷一つ付かないだろう。
機動都市の全エネルギーが尽きるまで数百年かかると言われており、足止めを続ける事は不可能。
出来たとしても地球は木っ端微塵になってしまう。

残された手段は一つ。
機動都市内で眠っている人間を覚醒させ、内部からバリアシステムを停止させる事。
先ほどの爆発はそのための布石。
ほんの僅かでもいい、機動都市の全システムをバリアシステムに集中させる必要があった。
この数秒間の隙にエデンから精神マトリクスを転送出来たエージェントは約60人。
ここだけではない。
世界中で暴走機動都市に対し、全人類の命運を賭けた戦いが一斉に開始された。


人類滅亡まであと3日。
未来はわずか数百人の少年少女達に託された。
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