第3話 山女魚

文字数 419文字



 射手が小川に着いてまもなく、金色の山女魚は見つかった(なにせ鱗が金色だから目立つのだ)。だが思わぬ先客がいた。

 (かに)(さそり)だった。

 蟹は大きな左のハサミで魚の頭をがっしりとつかまえていた。蠍は小さなハサミで反対側の尻尾をつかんでいた。陸と水に住むハサミを持つ者同士の引っ張りあいは、永遠に続くかと思われた。

 蠍は尻尾の毒針で何度も攻撃し、ついに毒を蟹の脚の付け根に打ち込んだ。と同時に蟹が右のハサミをふるい、蠍の頭を砕いた。

 二匹は死に、結果的に草むらで成り行きを見守っていた射手が、戦わずして勝者となった。

 獲物を持ち上げた射手はぎょっとした。魚は傷ついてぐったりしていた。そういえば『生きたまま持ってくる』が、双子の片割れが言った条件だった。

 あたりを見回すと、水際に誰かが捨てていったと思われる水瓶が放置されていた。

 射手は水瓶に川の水を汲み、慎重に魚を沈めた。こいつがくたばる前に、急いで双子の住む家に帰らなくては。

 射手は走った。

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