第6話 結末

文字数 550文字


 羊の男はほっとした。これでようやく永遠の命が手に入る。

 射手と羊の男は、魚と心臓を手に双子の家へと戻った。

「さあ、料理を食わせてくれ」

 まさか戻ってくるとは思わず、双子はうろたえた。だがそれも一瞬だった。

 適当に料理を食わせればいい。永遠の命が嘘だと分かるのは、どうせやつらの寿命がきて死ぬ直前なのだから。

 双子のひとりが魚を焼き、ひとりが心臓を煮てスープを作った。そのどちらからも何とも良い香りがした。

「あんたらにも永遠の命を得る資格がある」

 射手が運んできた料理を四人分に取り分けた。双子と射手と羊の男は、あっというまに料理を食べ終えた。

 双子たちが喉を押さえて苦しみだした。羊の男は口から泡を吹いている。射手の指が震え、スプーンが床に落ちた。

 猟師のカンで、彼だけが答えに行き当たった。

 蠍の毒だった。蟹と争っている時に、毒針が何度も魚に突き刺さっていたのだ。草むらに隠れていたせいで、射手はその場面を見落としていた。

「無念……」

 射手が最後の言葉を発した。

 四人はその場に倒れ、二度と息を吹き返さなかった。



 雲の上から一部始終を見ていた神は、人の欲が招いた悲劇を(うれ)いた。

 そして永遠の教訓に残すべく、この物語の象徴を十二の星座(サイン)にして、夜空に()い止めたのだった。




(12のサイン    おわり)
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