第2話

文字数 835文字

「このちっこいチワワがしゃべるの?まじか」
公園のベンチでともだち5人はちくわをのぞきこんだ。

「そうなんだ、みんなびっくりしちゃだめだよ。さあ、ちくわ。みんなにごあいさつして」
ぼくが言うとちくわはつぶらな瞳でみんなを見上げて

「わんっ」
と、かわいらしい声で鳴いた。

わん?って犬みたいな・・・。いや犬だけど。

ぼくがいくら話しかけてもちくわは、わん、しか言わなかった。
「なんだ、ウソじゃん」
ともだちはぷりぷりしながら帰っていった。

ぼ、ぼくはうそつきじゃないよーー!

 家に帰ってもぼくは冷蔵庫からおやつのプリンを出すのも忘れ、膝を抱えて部屋の隅からちくわをにらんだ。
「どうしてしゃべらなかったのさ。ぼく、うそつきにされちゃったじゃん」

ちくわは、うひっと笑って
「すまん。いまいち気分がのらんかったんや」
と謝った。

なんだよ、それ。

 そのとき、ピンポンとインタホンが鳴った。
「はーい」
インタホンの画面を見ると、知らない男のひとだった。
「テンキ料金の集金でーす」
「はい」
 留守番のときは、こういうお手伝いもしなくちゃならない。
お金、お金・・・っとごそごそと財布を探した。
するとちくわが
「あほかお前、あいつ詐欺師やぞ」
と言った。
「えっ?だってデンキ料金って」
「ちゃんと聞いてへんかったんか。どんな耳しとんねん。デンキ料金やなくて、テンキ料金言うとったぞ」
「はっ?・・・天気?」
「あいつ、このへんの留守番小学生をだまそうとしてるんや」
「えーっ」
ぼくは、こわかったけど、ちくわに言われた通り、
「電気料金なら払うけど、天気料金は払わんぞ!」
と勇気を出してインタホンごしに叫んだら、男は逃げた。

ほっとした。

「ちくわ、あいつ、このあたりの小学生をだますって言ったよね」
「そやで」
「なら、クラスのみんなに知らせなきゃ!」
ぼくは家の電話で、まず隣の席のいっくんに伝えた。でも、いっくんは・・・いや、いっくんだけじゃなくて、他のともだちも
「なんでまた、そんなウソつくんだよ?」
って、ちっとも信じてくれない。
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