第2話

文字数 1,726文字

優也は、ソバを打っている。一心不乱に。
 包丁を持ってトントンと音を立てながら打っている。
 空は快晴。
「優也、ちょっと休憩しな」と大将は言った。大将は、心配をして言った。
 最近、優也は、休憩時間でもイライラしている。優也は、ミユキと別れて、再び、幼馴染のアヤカと付き合っている。
 ミユキに「彼氏ができたから、私、優也と別れる」と言われて凹んでいた。いや、本当は、優也は、前に、ミユキと藤沢の方までドライブをして、乗り物酔いでゲーゲー吐いていたミユキの後始末までしたのは、優也だった。
 「吐いた後も一緒に帰ったのに、どうしてあいつは、違う男と遊ぶ?」と分からなかった。
 休憩時間になると、振られたミユキのことばかり考えていた。
 そうして、ゲームをしながら、コーヒーを飲んでいた。
ーあ、LINEだ
 そしてLINEの発信者は、アヤカだった。
『今日、トトールコーヒーショップの仕事が終わったら、優也に会いに行く❤』とシンプルなメッセージが来た。
 アヤカは、髪が赤くて華やかな顔立ちをしていた。身体つきは、がっちりしていてまるでモデルみたい、と思った。
 アヤカは、高校を卒業して体育の専門学校へ行った。そして、インストラクターの資格を取って、ダンスをスポーツクラブで教えていた。EXILEが好きだったから。
 性格は、悪くない娘だが、美人なのに、言葉ががさつで、ダンスの先生をしても、そのことが原因で、職場の上司と口論になり、3か月で仕事をやめた。
 今は駅前のトトールコーヒーショップで仕事をしている。
 ところが、アヤカは、ギャル系で可愛くて古川優奈みたいな顔立ちだから、アヤカ目当てでカフェへ来る客ー男性客も多かった。
 実は、優也のファーストキスの相手は、アヤカだった。近所の違う都立高校へアヤカは、通っていたが、アヤカが凹んでいる優也に、「私が、元気にさせる」と言ってキスをした。
 だが、アヤカは、他の男子生徒にも、同じようにキスをしたり、果てはホテルまで行っていた。
 一度、優也は、そんなアヤカに怒っていたが、色んな事があって、20代のこの年まで腐れ縁で続いている。
 そんな時だった。
「優也、今日は、二時から入りな」
 と大将は、言った。
 その時、たまたま、優也のスマホがPRRと鳴った。
「優也」
「どうしたの?アヤカ?」
「今日、お店の前まで来ているよ」
「え?」
「玄関のところにいるよ」
 スマホの会話だけでは分からない。慌てて、お店の玄関の入口へ行くとアヤカが、ショルダーバッグをかけて、白のブラウスとスカートを着て、立っていた。
「オレ…」
「大将さんにお願いしたら<良いよ>って」
「じゃあ、二時まで」
 と言った。
 優也は、アヤカと二人で公園を散歩し、近所のもんじゃ焼きのお店で時間を潰した。気のせいか、アヤカの顔が小さく見えた。少しやせているように感じた。瞳は、キラキラしているし、肌もツヤツヤしている。
「帰るね」
 そう言って会計は、アヤカが、払った。そして、優也は、アヤカを見送った。見送った先には、また知らない男がいた。知らない男のクルマに、アヤカは、乗った。
 アヤカも手を振ったが、知らない男も軽く頭を下げた。ぴょこんと。
 何が言いたいのか?モヤモヤすっきりしない気持ちがあった。優也にとってみたら、アヤカは、<しょうがない女>には、間違いがなかった。ただ、いないと寂しい感じもしていた。
今朝、優也は、スマホのニュースを観ていたら、アイドルの女の子が、いきなり子供ができたから結婚する、なんて見出しがあったのを思い出した。
 そして、優也は、アヤカが、「あいつは、そんなところ、だらしない」といつも思っていた。一度、駅前のホテルから出てきたアヤカを見た時は、ショックだったが、何度も何度もホテルから出ると、「あいつは、またホテルから出てきたのか」と鳴れていた。ところが、慣れは怖い。
 「もう一度、アヤカとよりを戻すことはないか」と優也は、思っていた。ちょっとだらしない女だったけど、そうではなく、ミユキと会えないかも、があった。
 ミユキは、顔立ちが、癒し系で女優の有村架純に似ていた。アヤカみたいなスポーツができるとか得意ではないけど、上品な雰囲気がしていた。
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