第3話

文字数 1,377文字

優也は、都立高校に入学した。桜の花がひらひらと舞い散る背景にクラスメイトと写真を撮った。
 アヤカも、同じ都立高校だが、アヤカは、クラスが違っていた。
 優也は、スーパーのレジ打ちでアルバイトをしたお金を貯めて、原付の免許を取った。そして、休日は、バイクで山まで走った。または、海へ向かっていた。
 たまに休みの日は、横浜とか川崎までバイクで走らせたが、赤色の京急電車を見て、何となく、アヤカを思い出した。
 アヤカが、蒲田駅で転んで助けたのは、京急の駅員さんだった。そして、あの日、優也は、アヤカからいつも「京急の運転士さんって、かっこいいね」と聞かされていた。
 アヤカは、ついこの間まで真っ黒な子供みたいな女子中学生だったのに、いつの間にか大人の女になった。
 アヤカが、他の男と一緒に帰るのを見て嫉妬した。ヤキモチを焼いた。
 だが、優也は、昔のアヤカを知っていた。「何とかアヤカの気を引きたい」と思っていた。ある時、蒲田駅から京急快特で横浜まで行くとき、「電車の運転士になりたい」とか思った。
 ところが、どうしたら良いのか分からない。たまたま、パソコンで検索したら、「観光専門学校へ行く」とあった。
 観光専門学校の鉄道科へ行けば、京浜急行に就職して、運転士になれる、と呑気に思った。
 そして、優也は、鉄道会社に就職して運転士になるとか考えて、ネットで検索をしたら、たまたま、「色弱はなれない」と誰かがネットに書き込みをしていた。
 優也は、小学校4年生の時、「色弱」と言われていた。
「いや、そんなはずはない」と思い込みたかった。
 それで、優也は、眼科のクリニックへ行った。そして、相談したら「なれない」と40代の中年男性の眼科医は、診察でさらりと言った。
 優也は、ぐれた。それまで黒い髪だったのを茶髪にした。授業中には、先生に「クソじじい」「クソババア」と罵った。
 クラスの友人を怖い目つきでにらみ、家と学校を電車で往復せず、バイクで移動した。
 時々、アヤカが仁王立ちになって、「優也、どうしてそうなったの?」と心配そうに言った。しかし、優也は、「アヤカは、どうせオレの気持ちなんて分からない」と決めつけていた。
 優也の担任のまさみ先生は、違っていた。彼女だけは、「優也君、コーヒーご馳走するから」とコーヒーを差し入れしていた。
「今日、どこ行くの?」
「うっせ、ババア」と優也は言った。
 そんなある日だった。休憩時間中に、優也は、帰ろうとして、アヤカが、来た。
「優也、いい加減にしなさい。みんな、心配しているよ」
 アヤカは、涙目になって懇願した。
「アヤカ、うっせーな」
「怪我しても知らないわよ」と言い放した。叫んだ。
 校門からバイクで十分、走った時に、前から来たティーダにぶつかった。
 正面衝突だった。ガシャンと、音がした。
 優也はどうしたら良いのか分からず、ティーダの運転していた男の人が、「君、高校生だろう」と言って、「どこの高校?」と言った。
 担任のまさみ先生が、駆け付け、両親も来た。優也の母親は、泣いていた。優也は、楽しみにしていた大阪の修学旅行へ行けず、家でゲームをしていた。停学処分になった。事故の弁償は、優也の両親が、払った。
 優也は、退学にならない代わりに、カウンセリングと高校を卒業したら、まさみ先生の実家のそば店に就職することが、決まった。
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