受け継いで 【エッセイ賞】

文字数 821文字

地元では有名だったカツカレーの老舗がコロナ禍中に閉店となり、中華そばの店に替わっていた。どうも人気のようで、自分が行く時間には、既に品切れ閉店の日が続いていた。そしてようやく、ようやくその日がやってきた。

 当然ながら、間取りはカツカレー店の頃のまま。座ったのは厨房前のカウンター。ここの雰囲気も、以前のまま。同じように、ご夫婦で切り盛りされている。年齢は、すっかり若くなってしまったが。

 いくつかあるメニューから、唐揚げ定食を注文した。最近、ラーメン屋さんも餃子ではなく唐揚げを出す。流行りというのは、あるものだ。

 定食は唐揚げの皿と米飯に中華そばが付く。このお店で嬉しかったのは、中華そばのサイズを(小)にできること。若いご夫婦だからこそのアイディアな気がする。個人的な希望としては、中華そばは(大)にして、米飯は要らないのだけど、そういう設定で定食を提供するお店は、ほとんどない。

 まず米飯と中華そば(小)を運んでいただく。中華そばは確かに小ぶり。でも少なすぎて驚くようなものではなく、これで一〇〇円引きはお得だ。表面を大きなチャーシューが覆う。背脂と地元産のネギも見える。旨そうだ。
 小刻みなメンマも珍しい。このメンマ、やわらかくて美味しい。麺は白く、やや細い平板。つゆもしっかり乗るやつだ。
 と満足していると唐揚げ到着。やや小ぶりなもの三つ。キャベツとマヨネーズ付き。衣厚めで、自分的にはサクサク感が足りず。味付けは、生姜がやや目立つ印象だった。

 しかし、総合的にはかなりの満足度である。中年メタ坊の今は、満腹にならないけど、足りない訳ではない量を理想とする。
 コロナ禍での新規オープンは苦労も多いだろうが、非常に好感を持った。売り切れで食べられない日が続いて当然だ。会計の際に「またよろしくお願いします」とエプロン姿の若女将に声をかけられる。
 
 カツカレーのお店のように、長く愛されるお店になって欲しいと思いながら、駅へと向かった。
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