イン・ザ・ダストー星を仰ぎ見て第6話

文字数 3,388文字

イン・ザ・ダストー星を仰ぎ見て■第6回■私は罠に陥り、高級市民最高幹部会から反逆者と考えられていた。この星の原住民を操り、私を裏切り者と呼ぶD90は下の星の生産計画を遂行しょうとする。

インザダスト■第6回(1986年)SF同人誌・星群発表作品

冬という季節が急速にやって来て、この世界を包み込もうとしていた。



我々は穀物の取り人れを急いだ。



が奴らはやってきた。



 収穫の塔の管制室のモニター=スタリーンに、数を頼んで突き進ん



で来る原住民遠の姿が、はっきりと映し出されていた。



農場と未開地の境界線へと近づいてくる。



 我々は彼らをできるだけ傷つけ痙いで追い払わねばならない。



なぜなら、我々はこの星では異邦人にすぎないのだ。



 境界をすきた彼らに電撃が放たれた。境界線の要所、要所に全自



動トーチカが設置されているのだ。



 二、三人の原住民か地面に投げ出された。残りの男達は驚き、後



退する。遠く離れた遮蔽物に隠れて、こちらを伺っている。



 D25の声が、作業中の私のヘルメットイヤホンに響いていた。



「Z88、すまん。今、原住民達を攻撃したトーチカ225を点検しに行



って来れ」



「どうしたんだ」



「トーチカ225の制御機構が急に言う事をきかないようになった。当



分は奴ら、襲ってこないと思うか、もし、あのトーチカの電撃銃が



効かない事に誰かか気づいたら、大変な事になる」



 「わかった。行ってこよう」



 急いで、何の疑いももたずに、D25に言われるがまま、私は車に飛ひ乗り、指示のあった農場東南端のトーチカ225へ向かった。



トーチカ225の側にはタワーの管制室のモニターで見た通り、三人



の原住民がのびていた。



 原始的な武器か、彼らの側にころがっていた。いわゆる棍棒とい



う奴だ。



 私は、彼らをそのままにしてかき、トーチカの中へ入った。内部



は小形李宙船のコックピットを思わせる。メカの集積体である。



 制御機構をチエごクして見た。

不思議だ。このトーチカの防御ゾステムに手が加えられている。



時間ロックがかかっている。少なくとも数分間は電撃銃が



侵入者に対して放電されないようになっていた。



それも遠隔装置が添加されている。かなり以前からこうなっ



ていたようだ。



とすれば、先刻のスタリーンに映ったのは。



私は、内部操作卓の電話に手をかけようとした。



入の気配がした。後を振り返ろうとした。



私の頭に衝撃が加えられた。ヘルメノトがへこむのがわかり、目の



前が真暗になった。その瞬間、この事故をしくんだのか誰かがおぼろげに



わかり始めていた。







■私か目覚めた時も、まだ頭の痛みは去ってはいなかった。



 ここは不衛生極まりない洞窟の中のようだった。薄暗い光があち



こちに輝いている。



 不思議な事に、私の頭の傷口には携帯していた薬を使って処置が



なされているようだった。



 ゆっくりまわりを見渡すと、原住民が大勢いる。見張りの一人が、



私か目覚めた事に気付き、洞窟の臭へ飛んでいく。



 やがて、その原住民は一人の男を連れて来た。



 その男は我々の仲間の一人だった。私の後からあの農場に送り込



まれた男。そうZ90と呼ばれた男だった。





「ようやく、お目覚めかね。Z88」



「君があのトーチカ225に仕掛けを作ったな」



 Z90はにやりと笑った。



「その通りさ」



「君は、確か、あのプランテーンョンヘ来てーカ月後、消息を絶っ



た。D25は君を殺したと言っていたが」



「俺が死ぬだと。そう見せかけていただけさ」



私は突然ある事に気づき、叫んだ。



「君は、原住民の頭脳に手を加えたな」



「お察しの通りだ。がそれは私の仲間の作業でね」



彼は私に向かい、ニヤリと笑い言った。



「おいおい。Z88、いいかげんにしろよ」



 そして笑っていたZ90の顔が突然変貌した。



「Z88、いや、本名で呼ぼうか?シオンくん。君もあの疫病の原因を調べるためにここ



へ来たはずだ。我々は君からの連絡がないため、業を煮やし、統



いて私へ命令が下された。下の世界へ降下し、調査しろとな。l君も

知っての通り、上の世界は今まさに疫病で滅びようとしている。



その疫病率が加速度的に増加している。原因はプランテーション36



にあるらしいとマザーコンピュータは推論したのだ。



がD25は俺に気づき、俺を殺そうとした。俺は殺されたふりをして、



ここへ隠れた。そして、頭にちょっとした特殊加工を加えた原住民を連れ、



農場を襲い、穀物のサンプルをうばったんだ」



 「俺をどりするつもりだ」



 「お前は上の世界を滅ぼすつもりだろう。原因がわかっていて、なぜ



報告しなかった。なぜD25を抹殺しなかった。



 マザーコンピュータは結論を下した。お前も危険分子だとな。



お前はマザーに対して反逆を分こそうとしている。



我々、最高幹部会は、君の妻、さらに君と考えを同じくするものを捕えた。



いいか、 可能性のなくなった者が上の世界から追放される。この下の世界



へとな。



役たたずが集まるのがこの世界だ。



天国と地獄た。



いや若人の国と老人の国と言いなおしておこう。下の世界は可能性のなく



なった人間、つまり下級労働者の集まりだ。ここは、シオンくん、お前



や俺連高級市民、それにマザーコンピュータが長年かかって作りあげたシステムだ。それ



なのに、シオン、君は我々高級市民を裏切った。D25の行動を是認した。



我々高級市民の世界を死に滅に至らせようとした。理由はなんだ。君は養育者たるマザー



コンピュータに対して疑惑を持っている。



我々の副造主たるマザーに。なぜだ、君はマザーに対して反逆を行なおうとしているんだ」



「Z90,いや、ゼルフィンくん、よく考えてみろ。下の世界の穀物の搬入はマザーの



端末コンピュータがやっているはずだ。もし穀物に病原菌が混入されて



いたならぱ、まっ先にマザーか気づくはずだ。いいか、ゼルフィン。



よく聞いてくれ。考えてくれ。これは、マザーコンピュータこそ我々を滅ぼそうとしているのだ」



「何だと、きさま気が狂ったのか。なぜマザーが我々を滅ぼそうと



するんだ。それに病原菌の経路を調べるために我々を下の世界へつ



かわしたのだ」



「それはすでに、発病率が高まっているからだ。あとはドミノ倒し



だ。ゼルフィン、もう一つ、聞いてくれ。下の世界で人々がよく自



殺しているのは、マザーの影響に違いない」



 ゼルフィンはあきらめ顔で言った。



「わかった。わかった。君はマザーをそこまで悪者にしたいのだ



な。そして自らを危険分子として認めるわけだな。後の処置はマザ



ーと高級市民最高幹部会にまかせよう」



 ゼルフィンは独りごちた。



「その前にプランテーノョン86をかたづけるとするか」



「待て、ゼルフィン、聞いてくれ」



「何をいってやがる。裏切り者め」



私は縛り上げられてそこに捨て置かれた。



 数十名の原住民をつれ、彼ゼルフィンは洞窟の外へ出掛けて行った。原住民



たちもレイガンを手にしていた。



 見張りか一人残っている。さらにゼルフィンは私の体のまわりに



バリヤーを張って行った。



 私の近くを原住民の女が通りかかり、見張りの男と何か話した。



私の方を指さしている。彼女の視線は私の胸にあるペンダントに辿



り着く。彼女は何か、ここに住む動物の尖った歯を材料とした首飾りをしてい



た。私の綺麗なペンダントに目をつけたらしい。



 見張りの男は、レイガンを手にして、私の方へ近づいてくる。



バリヤーが切られた。



 ペンダントに、その原住民の男の指が届いた。



 一瞬、私の視界は強烈な光に被われた。



 ペンダントが強力なエネルギーを放射したのだ。



 私の眼が、物の識別ができるまで、かなりの時間がかかった。洞



窟内の原住民は皆倒れていた。



 私はマザーコンピュータに対する反抗計画を遂行しなければならなかった。



下の世界へ老人を送り込むのは、今や人口調整の一手段と化して



いるが、昔はそうではなかった。



 下の世界はいわば避暑地であり、上の世界で働き、舶み疲れた人



々の安息の地だったはず々のだ。



 それが今は、ここはまさに無意、無気力の地獄と化している。



 私はこのシステムの刷新を高級市民最高幹部会へ提案した。がメンバーの



単もが反対した。私は、このままでは上の世界が破滅に向かりとま



でも警告した。



 私は我々が、下の世界でもっと拡がって行くべきだと主張した。下



の世界の方が新しい星としての可能性がある。と述べてのだ。





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