イン・ザ・ダストー星を仰ぎ見て第4話

文字数 1,566文字

イン・ザ・ダストー星を仰ぎ見て■第4回■私Z88 は、責任者D25の行動に疑問を持ち、彼の部屋に忍び込む。そこで見たものは。





私はその日のルーテインワークを終わり、私達の宿泊所でもあ

る収穫の塔へ戻る。



 収穫の塔は、私が目ざめた所であり、又我々の宿泊所であった。



 下の世界のどこかへ降りてきた老人達は、順次、この世界に点在

するプランテーションヘ送られているらしい。



 D25の指令室へ入り、自殺者の報告をした。



 彼は少しも驚きもせす答えた。



「そうか、彼はそんな隋で死んでいたのか」



「彼だって 身元はわかっているのか」



「わかっている。Z88だ」



 私は狽狽した。



「何! それは私の番号ではないのか」



「Z88か行方不明になったから、分前が、中央からここの収穫セン

ターヘ送られてきたんた。仕事のーは一定だからな。人手もそん次

に必要ではたい。つまり人間の量も一定でいいわけだ」



「くそっ、上の奴らめ」



私は本当に怒っていた。D25は私の表情を見て、逆に笑った。



 「怒れ、怒れ、怒りも生きていくために必要な生きがいの一つさ。

Z88、死ぬ次よ。ずっと生き続けて、上の奴らを驚かせてやるのさ。

それに上の世がもそう長くはないだろう」



 私はその言葉「上の世がもそう長くはない」がひっかかった。



「うん、それはどういう事だ」



「いや、単忿る勘だ。そう深く考えるな、Z88」



D25は言いわけがましく言う。



「しかし、D25、怒りだけで、何年も生きていけるわけではあるま

い。私はそんな自信はない」



 D25は、猫背をもっと前にかがめて言った。



 「前にも言っただろう。上の世界への復讐という生きるための糧も

あるさ」



 D25は私の方を見ずに言った。彼の肩はなぜかふるえている。



私はD25の顔を見ようとした。他にも何か。私にはそう思える。しかし、相

変わらず、彼は無表情のままだった。



■私か少しずつ、この世界へなじんでいく間にも、他の人々の時計は動いている。



 仲間の一人、Z90がい々くなった。



Z90は私かこの世界へ着いた後で、送り込まれてきた男だった。



しばらくの間、彼は元気に農場で働いていたのだが。



農場の老人は全員で彼の行方を探した。彼の乗っていたキャリアが、農場の東南端のブッシュ

に乗り捨てられていた。



そこから外は我々の管轄外である。多量の血がキ々リヤー内に散っていた。

 再ひ、彼の姿か農場内に見受けられる事はなかった。彼もまたこ

のノステムの犠牲者となったのであろうか。





■数日後、私は秘かにD25のプライペートリルームヘ入り込んでい

た。



私は前々から機会をねらっていたのだ。少し調べたい事があったのだ。彼をそんなにも強く生きさせている自信の源だ。何か彼をそう、この大地にて息づかさせているのか。



彼にはこのステーション86の管理者として、かなり広いスペースが与えられている。



 彼の部屋はまるで大学の研究室の様だった。コンソールもあり、管理センターのコンピューターとつながっているようだ。



実験装置が並んでいる。何か、動物実験を行たっていたらしい。ラポの横に、この世界の動物の死体が積みあげられていた。私は彼の秘  



密を見てしまった。老人の彼が、なぜこんな事ができるのか。



 さらに彼のキャビネットを調べる。



古い立体写真が私の目についた。彼が若い時の写真らしい。美しい理智的忿女性と肩を組んでい



る。今のD25からは想像もできない幸せそうな表情だった。が、しかし、老人はダスト=・ノュートから落とされる時、何も持っていないはずなのだ。



 人の気配かして私は振り向いた。



 そこにレイガンを構えてD25が立っていた。



「Z88、お前は見てはいけないものを見てしまったな。



お前もマザーコンピューターのまわし者だったのか」



恐ろしい表情だった。



 インザダスト■第4回(1986年)SF同人誌・星群発表作品
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