プロローグ

文字数 474文字

 木々が揺れ、葉が舞っている。枯れはてひび割れた軌跡は緑を転々と残す。森が這いずっている。鳥たちは森の上空に避難し、旋回し一つの大きな渦を作っている。移動する森の内部では、強固な根を持つ雑草に覆われた地面が波打ち、木々の周囲は動力源である根によって掘り返されている。揺らめく木漏れ日は老化した葉が散るたびに少しずつ拡大していく。小動物達も巣穴にこもり、森が落ち着くまで待つ。停泊中に住み着いた移民たちはいきなりの行軍に慌てふためき、森の外へと大半が振り落とされていく。森を補強するように木から木へ延びる蔦には透明な結晶につつまれた果実が揺れている。蔦の下では、羽毛の生えた白い蛇が落ちてくる鳥の巣をあさっている。朽ちた建造物に衝突したのか、森が一際大きく揺れる。何とか巣穴を目指して蔦の上を走っていたリスが落下し、蛇が食いつく。その隣に最も大きな果実が落下した。衝撃で結晶が砕け、やわらかい果実が露出する。特別な食べ物を前に動きを止めたリスはあっけなく蛇に飲み込まれた。波打つ地面に転がされ、果実は移動していく。蛇は膨らんだ腹で、果実を追いかけた。

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