3。青吾~Seigo~①

文字数 1,042文字

3。青吾~Seigo~①

「すみません!蘭子(ランコ)先生!」
「あら、どうかした?もうすぐ昼食よ」
「いえ、この子の荷物が届いてなくて」
「え?!

ランチに向かおうとしていたら聞いたことのある声が聞こえてくる。高校生組は何となく2度目の者もいるためか、ゆったりと行動できている。でも、困ってる下級生…というか年下の子を見ようという雰囲気はなかった。
そんな中、

「見つかるかな……」
「大丈夫よ。きっと。さあ、私たちもレストランへ行こう、みんな集まってるよきっと」
「うん、おねえちゃん」
「何?」
「ありがとう」
「えー、私何もしてないよ。鞄も見つけたわけじゃないし…」

屈託ない笑顔を見せて、小学生の子と話をしている女の子は、自分の事ではないのに、なんだか頑張っていた。

両替の次は鞄捜索か……。

「どうした青吾」
朋之祐が声をかけてくる。
「朋、やっぱかわいいよな」
「え、おれ?」
「ばか、なんでお前なんだよ」
朋之祐、青吾の視線の先を見る。小学生の女の子と話してる心澄がいた。
「ああ~、心澄ちゃんね」
「真面目な子だよな」
「……青吾、話したことないだろ?」
「ない」
「なんで真面目だって分かるんだよ」
「見てたから」
「…………怖えよ」
朋之祐に気持ち悪がられた。
結構人数がいるけど、視線がいくんだよなー。いつも小学生組のお世話してる気がする。


あっ……


「おい、あれってわがまま姫じゃね?」
人が多くてレストランの中へ入りづらそうな心澄ちゃんたちに話しかけた女がいた。高校生組でもよく意見を通そうとする参加者のひとりだ。千夏人にべったりで、おそらく千夏人と同じ塾からの参加だろう。とても自分に自信があるのか、はっきりと意見を言う。1歩も引かず意見を通すところは、俺にはない部分だ。すごいな、と思う一方で、あまりにも自分が自分がと言いすぎるところが、高校生組から少し煙たがられていた。リラって名だったような……。その彼女が心澄に絡んでいる。
それでさえ、千夏人と話してたとこを見て、随分不機嫌になっていたから……
「まずくね?」
朋之祐と目が合う。お互い、ヘルプを出した方がいいか?的な雰囲気でアイコンタクトしてた時、割って入った高校生がいた。

え?あれって……ここの学生?

「はあ……外国の学生ってスマートだなぁ。しれっとボディタッチまでしてる」
朋之祐の呟きに、俺も頷いた。
「見習おう……」
「…………お前なあ」
赤い顔してお礼を言っているであろう心澄を見て、茶髪の青年に羨望の気持ちを抱く。なるほど…スマートな対応ってこいうものなのか。
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