第7話

文字数 262文字

 父は先月、海外の赴任先で亡くなった。

 かねてから癌を患っていた父を危惧して、親戚は日本に戻って静養しろと説得を試みていたが、父は聞く耳を持たなかった。

 渚に不自由ない暮らしをさせたいと、周囲に病気の事を隠して限界まで働き続けていたそうだ。

 父は、なんにも分かっていない。

 いつも考えがズレていた。
 私が小学生の頃。本屋さんで見付けたからと言って買って来たアイドルの写真集。
 去年にはもうそのアイドルには飽きてしまい、今は声優にハマっていたけど、得意げな父の顔を見ると「もうこれは好きじゃない」とは口が裂けても言えなかった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み