7月27日(2)
文字数 1,672文字
朝ちゃんが帰っていったそのすぐ後で。
やはりバスケ部で私たちと同じクラスの翼 が帰っていくのが見えた。
「翼ってかっこいいよね、明るいし、イイヤツだし」
イイヤツなのも明るいのもかっこいいのも本当だけど、私は特に翼のことを意識してなど見てはいなかった。
だけどその時の私は失恋でヤケクソ気味だったから目の前のこの鈍感男よりもイケてると評判の翼を褒めてみたんだ。
「……、翼、ポニーテールが好きなんだって。伸ばせばいいんでね?」
ニヤッと笑ったその顔に悟る。
脈など数グラムも数ミリもない、脈の数え方知らないけど。
ああ、協力してくれるんですね、そうですか、ありがとうございます。
今決定的なキズアトを私の純粋 な心 に残しましたよっと。
「だね、伸ばすかな」
ハハハと諦めたように力無く笑う。
切りたかったのにな、そろそろ肩にかかる髪の毛が暑苦しくて鬱陶 しいから。
「野々花~、タスク~!! サボってないでちゃんとやれよ、あかりんが困ってんぞ」
勇気くんの声にハッと我に返った。
夏休みの1年A組、高校最初の学校祭が9月に控えていて。
私たち4人は何故か学級新聞コンクールの担当にされてしまった。
4人ともに部活入ってないから夏休みでも動きやすいってのもあるのと。
頭のいい勇気くん、字がキレイなあかりん、美術部で絵が描ける私、誰とでも仲のいいタスクはネタ集めに。
クラスでの役割もハッキリしてたからか、皆に推薦 されて集まっちゃった感じ。
「野々花、イラスト描いてきた?」
あかりんの催促に昨日スケッチブックに描いた指定されたテーマのラフ画を見せると3人はそれを覗き込んで。
「やっぱうめえな、美術部」
タスクにそんな風に褒められたら照れる。
「いやあ、それほどでも~」
と照れ隠しにアニメキャラの物真似したけどスルーされたのは悲しい。
「勇気くんは記事書いてきた?」
「書いてきたよ、一つだけ。タスク、早く他にもネタ持ってこいよ」
「わかったー!」
何となくいいチームワーク。
夏休みという貴重な時間を学校で過ごさなきゃならないことよりも。
休みでも、タスクに会えるのが嬉しくて引き受けたってのに、な。
始まってすぐすぐ失恋した模様です。
タスクのことを好きになってから、まだそんなに長くはない。
最初はチャラそうなヤツって思ってた。
ノリも軽いし女友達も多いし、まあかっこいいし。
翼ほどじゃないけどクラスでも目立ってた存在、だから嫌でも目に入ってきてはいたけれど。
あの日までは全然意識したことなんかなかったんだよ。
6月の体育の時間。
女子はソフトボール、男子は野球をしていて。
私は取りこぼしたボールを追いかけて男子側のグラウンドにまで取りに行った。
そうしたら。
「危ねえって、野々!!」
殺気だったその声と共に私を抱き抱えるようにしゃがみ込んだタスク。
ドスッという鈍い音がタスクから聞こえた気がした。
「タスク大丈夫か?!」
男子たちの声が聞こえる。
だけど、私には一瞬何が起きてるのかわからなくて。
タスクが目の前でしゃがみ込んだまま背中をさすっていた。
「タスク?」
何か痛そうな顔、してる……。
わけの分からない状態に呆然 としていると。
大丈夫か?! と駆け寄ってきた男子たち。
バッターが打ったボールが私に直撃しそうだったのを。
タスクが身を挺 して守ってくれて。
タスク自身の背中にそれが当たったのだということを教えてくれた。
「タスク、ごめんね、痛いよね、ごめん」
私がボケっとしてたのが悪い、ごめんなさい、と謝る私に。
「野々が怪我ねえならいいや、おっきい声出してごめんな」
……、なんて私が気にしないように痛みに堪えて笑ってくれた。
何だよ、タスクってめちゃくちゃ優しいヤツじゃん、とキュンっとしたものがこみ上げて。
そこからだった、どんどんタスクの存在が私の中で大きくなっていっちゃったのは。
だからさ。
好きになってからまだそんなに長くもないから失恋したってすぐに忘れるさ、ってそう思ってたんだ、その時はまだ。
諦めればいいんだって。
やはりバスケ部で私たちと同じクラスの
「翼ってかっこいいよね、明るいし、イイヤツだし」
イイヤツなのも明るいのもかっこいいのも本当だけど、私は特に翼のことを意識してなど見てはいなかった。
だけどその時の私は失恋でヤケクソ気味だったから目の前のこの鈍感男よりもイケてると評判の翼を褒めてみたんだ。
「……、翼、ポニーテールが好きなんだって。伸ばせばいいんでね?」
ニヤッと笑ったその顔に悟る。
脈など数グラムも数ミリもない、脈の数え方知らないけど。
ああ、協力してくれるんですね、そうですか、ありがとうございます。
今決定的なキズアトを私の
「だね、伸ばすかな」
ハハハと諦めたように力無く笑う。
切りたかったのにな、そろそろ肩にかかる髪の毛が暑苦しくて
「野々花~、タスク~!! サボってないでちゃんとやれよ、あかりんが困ってんぞ」
勇気くんの声にハッと我に返った。
夏休みの1年A組、高校最初の学校祭が9月に控えていて。
私たち4人は何故か学級新聞コンクールの担当にされてしまった。
4人ともに部活入ってないから夏休みでも動きやすいってのもあるのと。
頭のいい勇気くん、字がキレイなあかりん、美術部で絵が描ける私、誰とでも仲のいいタスクはネタ集めに。
クラスでの役割もハッキリしてたからか、皆に
「野々花、イラスト描いてきた?」
あかりんの催促に昨日スケッチブックに描いた指定されたテーマのラフ画を見せると3人はそれを覗き込んで。
「やっぱうめえな、美術部」
タスクにそんな風に褒められたら照れる。
「いやあ、それほどでも~」
と照れ隠しにアニメキャラの物真似したけどスルーされたのは悲しい。
「勇気くんは記事書いてきた?」
「書いてきたよ、一つだけ。タスク、早く他にもネタ持ってこいよ」
「わかったー!」
何となくいいチームワーク。
夏休みという貴重な時間を学校で過ごさなきゃならないことよりも。
休みでも、タスクに会えるのが嬉しくて引き受けたってのに、な。
始まってすぐすぐ失恋した模様です。
タスクのことを好きになってから、まだそんなに長くはない。
最初はチャラそうなヤツって思ってた。
ノリも軽いし女友達も多いし、まあかっこいいし。
翼ほどじゃないけどクラスでも目立ってた存在、だから嫌でも目に入ってきてはいたけれど。
あの日までは全然意識したことなんかなかったんだよ。
6月の体育の時間。
女子はソフトボール、男子は野球をしていて。
私は取りこぼしたボールを追いかけて男子側のグラウンドにまで取りに行った。
そうしたら。
「危ねえって、野々!!」
殺気だったその声と共に私を抱き抱えるようにしゃがみ込んだタスク。
ドスッという鈍い音がタスクから聞こえた気がした。
「タスク大丈夫か?!」
男子たちの声が聞こえる。
だけど、私には一瞬何が起きてるのかわからなくて。
タスクが目の前でしゃがみ込んだまま背中をさすっていた。
「タスク?」
何か痛そうな顔、してる……。
わけの分からない状態に
大丈夫か?! と駆け寄ってきた男子たち。
バッターが打ったボールが私に直撃しそうだったのを。
タスクが身を
タスク自身の背中にそれが当たったのだということを教えてくれた。
「タスク、ごめんね、痛いよね、ごめん」
私がボケっとしてたのが悪い、ごめんなさい、と謝る私に。
「野々が怪我ねえならいいや、おっきい声出してごめんな」
……、なんて私が気にしないように痛みに堪えて笑ってくれた。
何だよ、タスクってめちゃくちゃ優しいヤツじゃん、とキュンっとしたものがこみ上げて。
そこからだった、どんどんタスクの存在が私の中で大きくなっていっちゃったのは。
だからさ。
好きになってからまだそんなに長くもないから失恋したってすぐに忘れるさ、ってそう思ってたんだ、その時はまだ。
諦めればいいんだって。