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文字数 811文字

 すると彼女は、

「憶えていないのか?私は軍人だ、今はな。
世界中が侵略されていて、日本政府はアメリカに吸収された。私は日本軍だ。日本方面自治州のな。この間決まった」

私の知らない間に、日本と言う国は無くなっていた。だが、そんな事どうでも良かった。

「何故、私だけここに置き去りにした?
どうやって連れてきた?」

 この質問は重要だ。
下手すりゃ夢で、目が覚めるかも知れない質問だったが。

「本当に忘れたのだな。あの日、お前は多分
ヘリに乗ったんだよ。民間人は騒ぐので鎮静剤を射たれて眠ってしまったのだろう。
この避難所には他にも居たはずだが。別の環境の良い施設に10数人運ばれる途中に殺られた。運が良かったな。
お前は多分、錯乱していたか騒ぐので強い鎮静剤を射たれて、後から救出する予定だったが。
その部隊も殺られてしまった。
私は生存者を探して、ここまで来たが、仲間も殺られてしまった」

「じゃ、酔っていたから置き去りか!
たった一人で!」

「他にも居たはずだ。数人と聞いた。
居ないのなら、お前を置いて砂漠に逃げたな。
戻れなくなり、日干しに成ってしまったのだろう。運が良かったな。何が幸いするか、世の中は分からないものだな」

 女はガツガツと、私の1日分の缶詰を平らげた。そして、

「はぁ〜食った。兎に角、ここを脱出するぞ!
銃は撃てるか?」

と言った。私は、

「そんなもの、出来る訳無いだろう。
普通のサラリーマンに!」

「そうか」

と、彼女は腰のホルスターから銃を抜いて差し出すと。

「安全装置を外して、引き金を引くだけだ。
弾を惜しまず撃て。自分の身は自分で守れ」

と渡した。私はゆっくりと拳銃を握った。
ズッシリと重たかった。
ポケットには入らない。
ああ、テレビドラマで観た腰の背中側にスボンのベルトに差し込んだ。
 私はジーパンとシャツを着ていた。
3週間、部屋着のままだ。
寝間着でないのが幸いだった。
 何かジャケットか、防弾チョッキでも着たい気分だった。
無防備過ぎる。
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