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文字数 709文字

 唯、他にも人が居たのは間違いなかった。
風呂の排水口に、長い髪の毛が引っかかっているのを見付けたからだ。
どの位前に居たのかは分からなかった。
乾いているので、かなり前であろう、としか言えなかった。
当然であるが全階、全部屋、誰も居なかった。

 ここに人が住んでいたのはかなり前で、片付けられた後と思われた。
だが最近、少なくとも何ヶ月か前には、ここに何人かがやって来ている形跡がある。
 その様な施設とは?社員保養所!
又はそれに類する場所と考えられた。それならかなり前の痕跡も納得出来たからだ。
 私は何故、私の部屋だけに食料が有るのか、それが分からなかった。私の部屋なのだろうか?リビング的な広さがある。
 そこに私が誘拐されて、誘拐犯が私を置いて逃げ出した様な感じだった。

 私は屋上から外を見てみた。
鍵は何処も開いていた。それがかえって恐かった。人は必ず鍵を掛けるものだ。特に人が使うものなら、片付けて何処かへ去ってゆくのなら必ず鍵はかけるだろう。
そんな日常的な常識的なものが、ここには無いのだ。綺麗な廃屋。そんな感じがしてきた。

 裏手は小高い丘で何も見えない。雑木林も行く手だけでなく視界も遮っていた。
3階建てのマンション的建物なので、屋上からもそう遠くは見えなかったが。
瓦礫と何かしらの建物が、正面のかなり離れた道向こうに見えた。
 そして砂漠の様なものも。
砂漠のオアシスなのか?!ここは・・・。
日本で、こんな場所は知らない。

 建物までは遠すぎて、半日はかかってしまいそうだ。乗り物が何一つ無いのだから、行ったら夜までに戻れそうもない。
 だが、このマンションの食料が無くなれば、
出てゆくしかないのだろう?
そう、考えるに到った。
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