第15話 宅配便

文字数 734文字

龍希は仕方なくコン太から荷物を受け取った。オダギリが領収書を差し出して
「サインをお願いします」
と言った。龍希はサインをする前にオダギリに訊いた。
「どうしてプラハの町に日本のナンバーをつけた車が走っているのですか?」
「それはお答えできません。ですがこの贈り物は大切なことを気づかせてくれる贈り物だと聞いています」
「その送り主は誰なんですか?」
「それもお答えできません。私はただの宅配ドライバーですから」
龍希はしばらくオダギリの顔を見つめた。理屈は通っていなかったが、悪いことをする人間には見えなかったので、龍希は受領書にサインをした。オダギリはサインをした受領書を受け取ると「ありがとうございました」と言って踵を返し車に向かってコン太と一緒に歩いて行き、車に乗るとあっという間にその場を去って行ってしまった。龍希は荷物を持って家に入ると、麗音が「お帰り」と言ってから不思議そうな顔で言った。
「その荷物何なの?」
「宅配便だよ。家の前で受け取った。でもなんか変なんだ」
「どういうこと」
「宅配ドライバーは白のハイエースに乗っていて、ナンバーは日本のものだった。それに荷物の紐を柴犬が銜えて持ってきた」
「それってオダギリ宅配よ!」
「え、どういうこと」
「車のドアにオダギリ宅配って書いてなかった」
龍希は記憶を反芻して、車のドアにオダギリ宅配のロゴが書かれていたのを思い出した。
「確かにオダギリ宅配って書かれていたよ」
「ほんとうに!」
「ああ、本当さ」
麗音は興奮しながら言った。
「オダギリ宅配の噂知らないの?」
「ああ、知らない」
「私が高校の頃、オダギリ宅配の噂が流行ったのよ。嘘かほんとかわからないけど大切な贈り物を持って柴犬と一緒に現れるって、世間ではかなり噂になったの知らない?」
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