第2話 期待と不安

文字数 1,168文字

会社の同僚であり、プライベートでも中の良い友人から“仮面舞踏会”に誘われた。
なんか合コンみたいだし、少し薄気味悪かったからずっと断っていたけど、彼氏と別れ、新しい刺激を求めていたのかもしれない。しかも参加者は仮面を付けて参加するって聞いたので、今まで思っていた自分の中のモヤモヤも少し和らぐかなと思って決心した。

“仮面舞踏会”とは、参加者が仮面を被ることで相手からどう見られているか気にせず、また相手の表情をいちいち気にせずに交流ができるため、現代社会に対するストレスを少しでも和らげるために開催する。また、舞踏会形式を取ることで、現実から離れた雰囲気を味わえ、ひとときの夢見心地な世界をあなたに提供する。

仮面舞踏会の申し込みは仮面舞踏会のインスタグラムに記載されたURLから申し込む。
数分後、仮面舞踏会の説明や料金、持ち物などを記載したメールが送られてきた。

さっきの説明を読むとなんか胡散臭い感じもするし、インスタグラムを見ても開催場所や開催日時の紹介はあるが、仮面舞踏会自体の写真はいっさい掲載されていない。メールの注意事項欄にも当日は全ての荷物をロッカーに預けてもらうと書いていたからだろう。ものすごい不安になってくる。大丈夫だろうか。今からでも行かない選択をすべきだと思ってしまう自分がいる。料金は一回5000円とそこまで高くないし、まだ払っていないので今なら引き返せる。

「大丈夫だって!!私も行くからさ!!
もし行ってみて嫌になったら、すぐ抜ければいいから!!お願い!!」
「うーん。なんか胡散臭くない?そんなに楽しいの?」
「確かにね。私も最初は友達に誘われて行ったけど、行く前までは不安だったよ。
みんな仮面を被って、飲み物を飲む時だってみんなに顔が見えないように専用の個室みたいなところに行くって聞いてたし。実際そうだったし。ただ、顔が見えないからこそ、声の雰囲気とか体型とかで相手をイメージして接するのがなんか非現実的でさぁ。なんとなく居心地が良かったんだよね。」
「そうなんだ。分かったよ。そこまで言うんだったら私も少し勇気出して行ってみる!
でも楽しくなかったらすぐ抜けるからね!恨まないでよ!」
「ありがとう!!大好きぃぃぃぃ!!!!」
「暑いから抱きしめようとしないの!!こういうときだけ甘えたなんだから!!」
お調子者だけど、この子の明るさにはいつも助けられている。かわいいな。
「だけど、なんで私をそんなに参加させたいわけ??」
「え?それはねぇ・・・ズバリ私が一回分無料で参加できるからよ!!!!」
「は・・・」
「許して!てへ!!!」
「ご飯奢ってよ!!!」
「ごめんってーーー」
なんとも軽い感じだな・・・
まぁそれも彼女のいいところなんだけど。

ということで、私は友達のゴリ押しで参加費を払い、1週間後の舞踏会に参加することになった。



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