第1話 仮面を被る社会

文字数 1,665文字

今日もみんなが仮面を被って社会は回っている。

人の顔色を見てみんなが態度を変え、時には威圧するために怒ったり、時にはかまって欲しくて泣いたり、また時には振り向いて欲しくて笑顔を見せたり・・・
みんな、人に嫌われたくなくて着飾っていたり、人をコントロールしたくて演じていたり。
みんな色んな腹黒い心でソトヅラを変えている。何が本心なのか分からない時代。
こういう時代だからこそ、若者の間で“仮面舞踏会”が流行っているのかもしれない。

仮面を被れば、表情は見えない。少なくとも表情を着飾らなくて良くなる。その分ストレスも減る。ただそれだけでは無いかもしれない。この世の中、当たり前にみんな“仮面”という嘘の、偽りの表情をしている中、本心で向き合いたいから“仮面舞踏会”を開いているのかも・・・

色々な気持ちがぐるぐる頭の中を巡りながら、私は初めて“仮面舞踏会”に参加する。
今までは全く興味が無かった。
周りの友達には誘われていたけど、少し怖い気持ちもあったんだと思う。

でも、今回は行ってみたくなった。理由は簡単。
私も仮面を被って愛想を振る舞うのに疲れたから。
同棲している彼氏のために、いつもニコニコして、疲れていても声音は優しく、「あなたを愛している」という気持ちでたくさん接してきたつもりだった。

「もう別れよう。君をみているとイライラしてくる。なんでいつも楽しそうなんだ?
自分は幸せいっぱいみたいな顔をされるのが俺は嫌なんだ。俺の話を聞く時だって、楽しくも無いくせにいつもお前はニコニコして聞く。本当は俺を小馬鹿にしているんだろ?同僚の悪口をいつも言っている俺に同情しているように見せて、心の中では馬鹿にしているんだろ?いつもいつも幸せそうにしやがって。」
急だった。彼はすぐに出て行った。
私は間違っていたのだろうか?彼のためにやってきたつもりだった。
でも、それが間違いだった。もう疲れた。

しかし、これも嘘だと分かったのは別れてから1週間後。
彼は浮気していたのだ。ありきたりだよね。でもこれが真実。

彼も仮面を被っていたと今なら分かる。
付き合い出した頃は、いつも「ありがとう」と言ってくれていた。
でも、ここ最近は「うん、、、そうだね、、、」
反応さえテキトーで、話をしていても携帯をいじっている頻度が多くなっていた。この時は、3年も付き合っているのだから、倦怠期かなと思っていた。
でも、今考えると倦怠期というもの自体、私はよく分からなくなる。
彼から話す時はほとんど、会社の愚痴ばかりになっていた。
「俺は頑張っているのに、誰も評価をしてくれない。」今思えば、付き合い出した彼は“優しい彼氏”という仮面を被っていて、最近の“愚痴ばかりで消極的な性格”というものが彼の本当の姿だったのかもしれない。そして、「お前は何にも俺の気持ちが分かっていない。」という彼が本当の姿だったのだろう。

付き合ってもずっとお互いがお互いのことを思って、幸せそうにしている人達がいる。結婚して何年も経っているけど、お互いこの人と結婚して良かったと思っている人達がいる。私と彼らの違いはなんだろう。ずっと仮面を被り続けているのか。それとも、素の自分をお互い出していて、マッチしているのか。どちらかなのだと思う。仮面をしないで人と接する人が少人数であれ存在する。そういう人に私は憧れ、嫉妬する。

いつから人の機嫌を、顔色を見るようになっただろう。怒られたくない、嫌われたくない、1人になりたくない・・・そんな気持ちでしか友達と話せなくなった。私が変なのかな。

答えが出ないまま、仕事を黙々とこなし、いつも通り、人それぞれに対して違う仮面をして接している自分がいる。“明るい私”、“気が利く私”、“リーダーシップのある私”、“後輩に優しい私”、“ユーモアがあっていつもニコニコしている私”・・・・
もう私自身、どれが本当の自分か分からない。

自分が分からなくなって、それでも仮面を被る自分を捨てられなくて、何も変えられないんだと思っていた時、諦めかけていた時、友達から“仮面舞踏会”に誘われた。

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