第3話

文字数 265文字

その後、留美は何度かあの海を訪れてみたが、もう二度と女と赤ん坊の姿を見ることは無かった。

「消えちゃった……か」

そうポツリと呟く留美の声は大きくなった波音で掻き消される。





海に来る前、通りかかった道の隅に公衆電話があったのを留美は見た。あの赤い110番ボタンを押して「殺人未遂を見た」やら「DV男が包丁を持って暴れている」やら、あること無いことオーバーに警察にぶち撒けて周りを困惑させてやろうかと悪戯心に考えた。


しかし、留美は大人しく海辺に来た。


そうして誰もいなくなった波打ち際に、留美は服を汚しながら一人寂しく座り込んだのであった。


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