第19話

文字数 809文字

 前提条件
「あのさ、よく好きの対義語は無関心っていうじゃん。じゃあ、怒りや寂しさってどうなるの? 答えはマイナス感情として打ち消し合うじゃなくて、『絶対値として加算』だよね。心を揺さぶられるだけ揺さぶられたら、もうドロ沼。故に恋愛は惚れた方が負けになりやすいし、故に、ホストに嵌まるとなかなか抜け出せない。恋愛は危ない。でもそんな残酷な現実に、どんどん身を投じていくのですよ、後輩。その先にあるもの? そんなのあたしも修道者だから分からなーい」

 問1・R君は夏トゥル5話のプロットを作成しだしました。この時のYちゃんの気持ちを述べよ。

「わかりません。単純に大喜びするような人ではない」
「うん、これは正直、あたしにも分からない。ただ複雑な心持ちであることは容易に想像できるので、前提条件から導き出される解は、『好きに効果的』であるといえる」

 問2・R君は夏トゥル4話の執筆が思うように進みません。この時のYちゃんの気持ちを述べよ。

「前提条件から導き出される解は、『好きに効果的』であるといえます。そうか、僕一人だけなら、不安や寂しさに駆られてウザ絡みしていたと思う。それは自分だけ楽になろうとする、悪手の中の悪手」
「いや、まだまだ、これからだから」

 問3・R君の夏トゥル4話の執筆が限界に達していて、彼は大いに悩んでいるようです。期末考査の勉強も並行しないといけないので、目の下にクマを作りながらふらふらと廊下を歩いています。それなのに人ごみの中からYちゃんの視線を見つけ出して、ニッコリ微笑み返してくれます。Yちゃんは大慌てでクラスに戻ります。ロッカーの中には空になったお弁当。その上には『毎日ありがとう、今日もおいしかったよ』と書かれたメモと、イチゴ味のキャンディーがひとつ。この時のYちゃんの気持ちを述べよ。

『凛だけ潤太に愛されてずるい』
 どこからか、回答が聴こえるようだった。
『凛だけ潤太に愛されてずるいよ!』


 
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