第1話

文字数 1,500文字

祝日

祝日はありがたい
何を祝う祝日でもありがたい
日々 宮使いを強いられて
体力と神経をすり減らしている者にとって
とにかく 公けに休めるということはありがたい
特に今日などのように芯から寒い日に
一日中 朝から猫のように寝ていられることは
これはほんとうにありがたく僥倖といってもよい
毎日 毎日 秋風に揺られる木の葉のように
あるいは 空っ風に吹かれて意味もなく
枯れた路上をカラカラと彷徨う空き缶のように
なすすべもなく 目の前の偶然の出来事に
いつも翻弄されているばかりの身にとっては
ほんの束の間ではあるが貴重な休息となる
何を祝う日であってもよい とにかく ありがたい
そして 例えば勤労感謝の日に感謝したりする
同時にこれら国民の祝日に当然のように休むことが
普通だと考えている勤め人が実はとても
恵まれている勤め人だということも最近知った
世間知らずも甚だしいと我ながら思うのだが
祝日とは全く関係なく働いていて しかも
その代休などもとより設定されていない勤め人が
実はとても多くいるということを最近知った
また そのような会社は給料もボーナスも
驚くほど低く ひどい待遇で働かされている
その多くのひとたちにとって祝日は
ぜんぜん 祝日ではないのである 
また この国を下支えしている 
働く人の四割以上を占めるという
派遣 アルバイト パートなどの
非正規社員にとっては国民の祝日や
連休などは全く無縁のものなのである
それなのにテレビなどではあたかも
国民のほとんどの人が祝日に休めて
三連休を楽しんでいるかのように報道する

祝日といえば 以前は「旗日」などと言い
町なかに日の丸の旗を掲げた家があったりした
ものだが 今ではまったく見なくなった
そして 祝日は単なる休日を意味するところとなり
テレビをつけるととても多くの人たちが観光地に
詰めかけている光景が映し出されいつも愕然とさせられる
これほど多くの人たちがこんなに寒くて
雨が降っているにもかかわらず
お出かけしていることに自分自身との
あまりのギャップを感じてしまう
今日は文字通り凍えるような寒さの中 
早朝から皇居の前に何千人もの列が
出来ているという映像に驚くばかりだ
そんな意志と体力はどこから生じるのだろう
私には凍える祝日にそんなところに出かける
気力も体力もカネもないのでただ驚いてしまう

凍える祝日にひたすら家に籠っているだけだ



ファンレターさまの紹介

皆に祝日を

氷雨が絶えず降り、とても寒い祝日でしたね。こんな日は何処にも出掛けず、家で猫のように丸くなっていたいものです。カレンダー通りに休める勤め人は幸せですよね。販売、飲食、観光業、公務員でも出勤しなければならない方は大勢いらっしゃいます。多くの方々のお陰で土日祝を快適に楽しく過ごせることに気付かされました。旗日とは懐かしい。今の若い世代の人達はわかるでしょうか?国民こぞって休める特別な日だと子どもの頃は思っていました。しかしアルバイトが出来る年齢になってみるとそうではないことに気付かされ、いい歳になってからはより一層、土日祝は特別な日ではないことを思い知らされます。安い給料でこき使われ、毎日の生活を維持するだけで精一杯。家族や友人との休みが合わず余暇を楽しむことが出来ない。何のために働き、生きるのか…生活維持だけのために稼ぐ人生に疑問を抱きながら、それでも辞めることが出来ずに働く人間がどれだけ多いか…この凍えるような祝日に心まで寒くなりながら思いを馳せました。皆に祝日を…年に一度でも誰もが何にもしないで休息出来る日は作ることが出来るでしょうか。恐らくそんな日が実際にあったら、あちこちから不満の声が上がり続かないかも知れませんね。






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