第3話 始業式

文字数 1,998文字

 高身長でスタイルの良い小豆紫音。
 部活帰り、友達の恵茉と別れ一人で帰っていた。
 すると何時ものように知らないおじさんが声をかけてくる。
 名刺を渡してくるおじさんは芸能事務所に興味はないか?ということだった。
 いつも通り名刺だけ受け取りさっさとその場をあとにすると、とある女子が紫音に声をかけてきた。
「紫音ちゃんだー。やっほー」
 のほほ~んと眠たそうに目をこすりながら声をかけてくる彼女に紫音は振り返り挨拶をする。
「お疲れ様、陽葵(ひまり)。バイト?」。
 メイドカフェで働いている陽葵に問いかける。
 陽葵は眠そうに頷いた。
 幼馴染の二人は並んで一緒に家へ帰える。
「ほんと疲れたー」
「夜ふかししてるから」
 紫音と陽葵は幼馴染。家が隣同士だから昨日夜遅くまで部屋の電気がついていたのを見ていた。
「えー?なんで分かるのー?ちあっぴがかっこよくて可愛いからつい遅くまで盛り上がっちゃって」
 そう言って大きなあくびをする。
 ちあっぴは陽葵の彼氏。人目も気にせずどうどうとラブラブしている、学校でもちょっとだけ有名なカップル。
「良かったね」
「えへへ。そう言えば今日は例の子と一緒じゃないんだね」
「同じ部活の恵茉のこと?」
「そうそう。最近よく一緒にいるじゃん」
「まーね」
「なんかすっごい仲良さそうで、少し嫉妬しちゃうー」
「それは陽葵が彼氏と一緒にいるからでしょ。ってかそもそも春休み入ったんだから、部活で一緒にいるだけ」
「あれ~。口数多い」
 紫音の心のうちに秘めた恋心を見透かしたように陽葵はからかうような笑みを浮かべる。
 陽葵に見つめられ、更にボロが出そうな紫音はあからさまに顔をそらした。
「別に」
「も〜紫音はわかりやすいんだから。そんなに整った美貌を持ってるのに奥手なんだよね〜」
「相手の気持ちも大切でしょ。それに恵茉には好きな人いるし」
「も〜だからいつも友達止まりで終わっちゃうんだよ。当たって砕け散らないと」
「砕け散るって。それに上から目線で」
 体の小さな陽葵は嬉しそうに答える。
「恋愛経験は私の方が豊富ですから」
 そんなくだらない会話をしている間に二人は家についた。



 始業式当日。
 部室で着替え終えたルイと蒼はギャラリーを連れながら一緒に教室に向かう。
 今日が始業式ということもあって学校中が騒がしかったが、間違いなくその騒がしさにこの二人がかかわっていた。
「てか、始業式から朝練はやばくないか」
 蒼の言葉にルイは笑いながら答える。なぜなら、ルイと蒼は正真正銘のサッカー好きだからだ。
「ほんと僕もそう思うよ。でも、なかったとしても自主練しただろう」
「間違いねぇ」
 そんなたわいのない会話をしているうちにあっという間に教室に着いた。
「うわ、すげー人だかりだな」
「何かあったのかな?」
 心配そうな顔を浮かべるルイに蒼はあきれたように肩をすくめる。
「こんだけのギャラリーを連れてきたルイが言ってもな。ってきーてねえし、流石ルイ王子」
「ん?蒼。何か僕に言った?」
 ルイの問いかけに蒼はただ首を横に振った。
「いいや、何にも。そんなことより道、開いてんぞ」
 いつの間にかルイの前には教室に入るための道が出来上がっていた。皆がルイの存在に気づき道を開けている。流石に王子様と言わざる終えない状況に蒼はただ感心していた。
「ごめん。ありがとう」
 ルイは道を開けてくれた女子生徒たちに優しく微笑みかけながらその道を通る。
 そして、ルイは教室に入ると振り返り蒼に別れの手を振りながらいつもの様に微笑んだ。
「ありがとう」
 蒼に送られたはずのルイの言葉は教室の外にいる女子生徒たちへのファンサと受け取られてしまい歓声が起こる。
 蒼は苦笑いを浮かべながら手を振り返してくれる。そして、幼馴染の咲葵と一緒に姿を消した。
 ルイは教室の中を確認すると、すぐ二人の男子生徒に声をかけられた。
「相変わらず凄い人気だ、ルイ」
「ちっ、お前とも同じクラスかよ」
 学校一のイケメンの呼び声の高い長谷川 樹(はせがわ いつき)と負けじとイケメンだが冷たい態度が目立ち一部の女子から人気の高い黒住煌(くろずみ こう)だった。
 この二人が同じクラスになってしまったから廊下があんなにも騒がしかったのだとルイはすぐに理解した。
「樹と煌が一緒のクラスなんてね。だから廊下があんなことに」
 驚きと同時に笑いながらいうルイに煌は冷たく吐き捨てる。
「お前が言うな」
「まったくその通りだよ、ね?」
 樹が近くのクラスメートの女子二人組にいきなり投げかける。
 その子達はコクコクと頷くと膝から崩れ落ち、廊下からはきゃーと歓声が上がる。
「はぁ……おまえらめんどくせぇーな」
 煌の冷たい言葉にまた一部の女子から歓声が上がる。
「あぁ?」
 怒りに満ちた煌を落ち着かせるように樹がいつものように割り込む。
「本当にこのメンバーには驚かされたけど、僕たちだけで終わりじゃないんだよ」
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