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文字数 329文字
今日も、誠司は酔い潰れた。酒は、五十を過ぎても、うだつの上がらない自分を忘れさせてくれた。独り身だが、愛を知らないわけじゃない。かつては誠司にも、共に時間を過ごし、想いを分かち合える女性がいたのだ。だがこの不景気で仕事が無くなり、その日暮らしの生活を余儀なくされ、恋人とも喧嘩が絶えなくなった。毎日、ストレスから浴びるように酒を飲み、ついには愛想を尽かされた。そして気付けば一人、六畳一間の古アパートで、観てもいないテレビをつけ、タバコを吹かし、スマホに残る消せない思い出を肴に安酒を呷る日々。外に出ることも億劫だった。時計は動いているが、誠司は動かなかった。どうでもいい。今はただ、酔っていたい。何もかも忘れて、いつもの優しい眠りに身を任せるだけだった。