第3話

文字数 455文字

事件は起きた。
将棋クラブデート、悪くなかった。
良くもなかったかも知れないけど。
だってわたしたち、将棋が好きなわけでもない。
特にわたしは時々駒の動かし方すら間違えちゃう。
「わかちゃん、違う、こうだよ」
「きゃあ、わかちゃん言われたわかちゃん言われたわかちゃん言われた!」
ボッ
ファンヒーターの着火音みたいに。
でも安心設計なんだ。
それを掻き消す周りの駒音、うーん、とかの唸り声に咳払い。
もしもしょおんくんにオナラ聞かれたら死んじゃう。
そんな不都合なわたしの音は、きっと聴こえない。
どきどきする幸せな声だけが聴こえる。
目が合ったら倒れちゃう。
きっと笑顔が引き攣っちゃう。
お互いの真ん中。
将棋盤だけ見てれば良い。
わたしたちの対局は長い。
ルール知らないから。
そのうち集中、ふたりの駒音しか聴こえない。
ああ、楽しいな!
「わかちゃん、珍しいわね。お友達?」
ママ、邪魔しないで、今いいとこなの。
ドサ
バッグを落とした音。
「そうちゃん…、そうちゃん!」
それから大変。
しょおんくん、いつの間にか居なくなってた。
それきり、まだ会えてない。
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