自分探しで雪山登山

文字数 613文字

 私は今白い世界にいた。
真っ白だ何も見えない。しかも吹雪いている。
 そう、私は雪山を登山していたのだ。
だからと言って、私が何の装備も持たない愚かなる素人と思ってもらっては困る。
ちゃんと防寒具を着て、靴だってちゃんとした登山用のものを履いていた。
にもかかわらず、私はこの雪山で一人道に迷ってしまったのだ。

 ホワイトアウトとか言うものだろう。
まったく方向すら分からない。
はっきり言って、上がっているのか下がっているのかすら、私の平衡感覚では解らなくなっていた。
 死ぬかもな・・・。
そんな事が頭を過ぎった瞬間だ。
私は何かとすれ違った。
この雪山で、人の居ない真っ白な世界で、視界ゼロのこの世界で。

 私は何だ?と振り返った。
するとそこには、吹雪ですぐ消える足跡をつけながら、真っ白い着物を着た、髪の長い女性が歩いていた。
私は思わず、雪女なのか・・・ようか・・・
ここのか・・・。と思ってしまった。
私は親父ギャグが好きだ。
 この期に及んでも、まだギャグを考える余裕があった。それは、私のこの登山の目的に大きく起因している。
その目的とは・・・。

「すみません、道に迷ったみたいなんですけど。この先頂上ですか?それとも麓ですか?」

私は立ち去る女の人に、そう聞いた。彼女は、この猛吹雪の中振り返り近寄って来た。
どうやら風向きが良かったのだろう。
私の様に、ヘッドホンタイプの耳当てで、
『○人はサンタクロース』を聞いていなければ聞こえるのかも知れない。
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