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文字数 683文字

 それとも、登山家の知り合いが、私の事を嫌いだったのか?或いは天が与えた試練なのか?
私は成る程、修行とはこう言うものだなと、
笑いが込み上げてきたのだ。
 よくスポーツ選手は、冬はオフシーズンだからと南国でトレーニングを積んだりするが。
人生に、オフシーズンは無い!

 況してや、用意された試練を何の有効活用もしないのは、天に対して失礼極まりないと。
私は雪山登山を選んだのだ。
 そして私は、その試練の中、雪女に遭遇したのだ。そして、更に山小屋へと導かれた。
正に、これこそ修行ではないか!
 私は意気揚々と山小屋へと向かった。

「御免ください」

 私は礼儀正しく、断りを入れて扉を開けた。
ギギーッ、と言いそうな扉は。存外、最新鋭の扉の如く、すんなりと音もなく開いた。
 中から、冷たい冷気が・・・。
と思えば、当然の如く暖気が私を出迎えた。

「暖かい・・・」

私は思わず呟いた。すると部屋の中央辺りに。
 そう扉の向こうは、古風な囲炉裏のある、
田舎の民家だったのだが。そこにゴソゴソしている、全身真っ白な着物を着た、長い黒髪の
さっきの雪女が座っていた。
 私はその時思った。
やはりこれはホラーかもなと。
しかし彼女は、雪女なのに、寒そうに囲炉裏の火に薪を焚べているではないか!

「何者だ?」

私の思わず漏れた呟きに彼女は、

「人の家に勝手に入って、何者だもねぇもんだ。あはは、寒かろ、はよ暖まり」

と、何とも暖かい言葉をかけてくれた。
 私は彼女の正体が気になり、荷物を扉の直ぐ側に下ろすと、靴を脱ぎ部屋へと上がった。
靴が、中々脱げなくて難儀してしまった。
足をつりそうになった。
しかも感覚が、殆ど無かった。
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