第１話

お・も・て・な・しの国


東京はうつむいていた
そして　今にも泣き出しそうだった

これがオリンピックを一週間後に
控えた都市の姿なのだろうか
こんな東京の姿を見たのは初めてだ
梅雨が明けた週末　首都高速で
都心を巡りながら私は息をのんだ
街がうつむいている　そして
今にも泣き出しそうにして涙をこらえている
誰が東京をこんなひどい目に合わせたのか
何が東京をここまで追い詰めてしまったのか
街から生気が失われている
都市が持っている活気や躍動感が失われている
いったいここに人は住んでいるのだろうか
無人の大都市　東京　一週間後にはここで
オリンピックが開かれる筈である東京
空虚で無人な空気にすっかり覆われた東京
祝祭感や高揚感などもとより微塵も感じられない
誰が東京をこんなひどい目に合わせたのか
何が東京をここまで追い詰めてしまったのか

お・も・て・な・し
をかたった者たちはろくでなしだった
福島はアンダーコントロール
福島復興をかたってオリンピックを東京に
呼び込んだ者たちは今の東京の姿をどう見るのか
どう責任を感じているのか　嘘と偽善で固めた
オリンピックを呼び込んで東京をこんな姿にした
あの人たちは今何を感じ　何を考えているのか
日本のおもてなしとはこんなものだったのか
どんなに国民が中止を望んでも自国民の命と生活を
危機に晒し　ひたすら　カネのために突き進む
インパール作戦と揶揄されても決してやめない
こんな日本にやってきた世界のアスリートには
本当に申し訳がないではないか　犯罪者のように
行動を監視され囚人のようにホテルに缶詰される
こんな　お・も・て・な・し　は　なるほど
日本をおいて他にないだろう　そして　
このオリンピックの後　東京はどうなるのか
日本はどうなるのか　誰が責任を負うのか
これではあの戦争の時とまったく同じではないか
国が歴史上　かつてない滅亡に瀕しても
政治家も軍人も誰も自分には責任はないと言い張り
国民は俺たちは騙された被害者だと言い張る
こんなことがまた繰り返されるのだろうか
こんなことがいつまで繰り返されるのだろうか
いつになったらまともな国になれるのだろうか
この　お・も・て・な・しの国は