#2 初陣ののち 第一幕
文字数 1,156文字
『無事「ゴルゴンの杖」を盗み出せたようだな。
使い時を誤らなければ、現代での戦いにおいて強力な助けになるだろう。』
ここはツヴァイ――の正体である現代の高校生、有瀬ルナの部屋。
ストレートフラッシュのメンバーはそれぞれ変身を解いて、
異世界ファンタジーに存在する司令部、通称「上」からのメッセージを聞いている。
『有瀬ルナと節木マーヤ……失礼。
ツヴァイとフィーアは初の潜入任務だったが、無事に成功させたな。よくやった。』
緊張やら戦闘疲れやらで消耗しきったルナはその場でへたり込んでいた。
足のダメージも予想以上に響いている。
一方のフィーア……変身解除で髪も解けたマーヤは余裕そうだ。
こちらはそもそも緊張自体していなかった。
無事は無事だが広範囲に二回はキツかったみたいだな。
解除するのだって魔法なわけだし、使い時を考える必要があるぞ。
何よりこの制限が向こうに知れたらまずい。
石化って強力だったもんね。でもまさかここまで反動来るなんて……。
『現代人は本来魔法を使う存在ではない。
魔力消費に伴う疲労を受けやすく、場合によっては魔賊への変身もできなくなってしまう。
何より生活に支障をきたすのは望ましくないことだ、よく休んでくれ。』
『アザトは引き続き二人のサポートを。
彼女らが無理をするようであれば力ずくでも止めてほしい。』
『メッセージは以上だ。今後も両世界の平和のために励んでほしい。
なお、この通信は3秒後に消失する。』
そこで音声は途切れ、通信装置は程なくして砂になった。
手で触って完全にただの砂になったことを確認すると、ルナがようやく音を上げる。
アインと呼ばれていた少年、ファンタジーからやって来た戦士のアザトは崩れ落ちているルナに目線を合わせた。
できればアニメみたいに変装して華麗に決めたかった……。
なっ、バカ言うな!あの変身だって実は高等魔術なんだぞ!
自由な姿に変身できるの幹部級と魔術師上がりしかいねーんだからな!
魔賊においての常識を話しただけなのに、ルナとマーヤが少しおちこんだように見えた。
そんな二人にアザトは買い溜めしていた袋入りのアイスを手渡して笑う。
わ、ありがとう! でも平気なの?
アザトってほとんど毎晩それ食べてるけど、太らない?
ファンタジーの人間は現代人と比べて太りづらい体質らしい。
夜中と言うには少し早い時間、まだまだ三人の話は弾む。
幸いにも明日は土曜日だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)